ATIGAに基づくASEAN域内の関税撤廃が完了-ベトナムの自動車輸入関税30%もゼロに-

(ASEAN、ベトナム)

バンコク発

2018年01月19日

ASEAN各国ではASEAN物品貿易協定(ATIGA)に基づく先進ASEAN諸国における関税撤廃(2010年1月1日)に続き、後発ASEAN諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)でも2018年1月1日に、関税が原則全て撤廃された。特にベトナムの乗用車やオートバイの一部品目にかけられていた30%の関税が撤廃されたことはASEAN域内における産業立地上の大きな転換点となりそうだ。

後発4カ国の関税撤廃率は平均98.1%に

ASEAN各国では、201011日にASEAN物品貿易協定(ATIGA)が発効、先進ASEAN諸国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)で関税が撤廃され、後発ASEAN諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム:CLMV諸国)についても、原則201511日までに(一部2018年まで猶予)撤廃されていた。201811日に実施された追加的な関税撤廃措置は、CLMV諸国の除外品目以外の関税撤廃猶予品目が対象となったもので、この措置でASEAN域内の関税撤廃が完了したことになる。

ASEAN事務局が公表しているATIGAの関税削減スケジュール表(譲許表)に基づき、201811日に関税が撤廃された品目を、HSコードの部ごとに整理したものが添付資料の表1だ。ASEAN統一関税分類(AHTN2012年版の8桁分類で対象品目数をベースとすると、各国とも関税撤廃が猶予されていた650超の品目(約7%)の関税が新たに撤廃されたことになる。既に撤廃されているものを含めると、ATIGAにおける関税撤廃率はCLMV諸国平均で98.1%に達している。

ベトナム政府の非関税措置に留意が必要

このうち、5%を超える関税が撤廃されたのはベトナムのみで、その内訳は添付資料の表2のとおり。廃油(2品目)を除くと自動車およびオートバイが対象となっている。これら品目については数年間かけて毎年関税率が低減されてきたが、今回の措置で30%の関税が撤廃された。ベトナム国内の自動車市場の拡大や、これまでのASEAN域内の自動車輸入関税の段階的な引き下げなどにより、タイからベトナム向けの自動車関連品目の輸出は2010年以降順調に拡大してきたが、2017年に入り乗用車(HS8703)および自動車部品(HS8708)の輸出額は急減した。2018年の輸入関税撤廃を見越し、消費者の間で買い控えの動きが広まったことが主因と考えられる。ベトナム自動車工業会(VAMA)によると、直近11月の自動車販売台数は乗用車が、12,449台と、前年同月の16,375台と比べ24%減少した。

他方、留意が必要なのは関税撤廃に対するベトナム政府の対応だ。20171017日に施行された政令116号(1162017NDCP)により、自動車の輸入事業者に対し、輸入検査の際の他国当局による車両認可証の提出や、船積みごとの車両検査の義務付けを求めるなどの措置を導入している(2018年1月17日記事参照)。これら新たな非関税措置の導入は、関税撤廃の効果をそぐものであり、貿易を阻害することのないよう、適切なかたちでの制度運用が求められよう。

(蒲田亮平)

(ASEAN、ベトナム)

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