免税店(Tax Free)制度の導入を決定、ウラジオ含む7地域でスタート

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2017年12月11日

プーチン大統領は11月28日、外国人を対象に付加価値税がかからない免税店(Tax Free)制度を導入する法令に署名した。2018年10月までに細則を決定し、正式に適用を開始する予定だ。現時点で免税店の対象となる小売店舗の所在地としてモスクワ、サンクトペテルブルク、ウラジオストクなど7地域38カ所が挙げられている。

税込み1万ルーブル以上が条件に

署名されたのは、連邦法「ロシア連邦国税基本法第1部88条および第2部第21節の修正について」。ユーラシア経済連合(EEU)加盟国(注)国民を除く外国人を対象に、1日合計で税込み1万ルーブル(約1万9,000円、1ルーブル=約1.9円)以上の物品を購入した場合に付加価値税(現在は18%)を還付する。対象となる外国人の要件は、a.外国政府発行のパスポートを提示できること、b.本人がロシアに入国し、購入した本人によって当該品目がEEU域内から搬出されること、c.指定の出入国検査場を経由すること、などとされている。

2018年10月までに細則を決め、適用開始へ

食料品などの消耗品(消費財)や政府が別途定める品目は、免税の対象とはならない。還付請求時には、指定の形式に沿った書類を提出する。還付請求は、購入時から1年以内で、かつ購入時から3カ月以内にEEU域内から搬出された品目が対象となる。今回署名された修正法案は公布後1カ月を経て2017年12月末に発効するが、書類様式の決定やデータの電子媒体での提出方法、税関手続きの変更や電子システム改修などの詳細な制度設計は2018年10月1日までに行われる。沿海地方など特定地域については、2018年10月1日以前に試験運用が始まる見通しだ。

モスクワ、サンクト、ウラジオで多くの免税店が指定

本件を所掌する産業商務省は2017年11月28日、現時点での免税店候補の店舗が所在する住所を案として公表した。モスクワは市内中心部のショッピングセンター「ツム」「グム」「ツベトノイ・ブリバル」など、郊外ではモスクワ環状道路(MKAD)沿いの「クロカックス・シティ」など計11カ所が挙げられた。サンクトペテルブルクは中心部の「デー・エル・テー」、ネフスキー通り沿いの店舗など6カ所が含まれている。地方都市では、ソチ市(クラスノダール地方)が5カ所、ノブゴロド市が2カ所、カリニングラード市が4カ所、沿海地方が9カ所、などとされている。

沿海地方では、カジノ「チグレ・デ・クリスタル」(アルチョム市)、ウラジオストク市内のショッピングモール「セダンカ・シティ」、ショッピングセンター「マキシム」「クローバーハウス」「チェリョムシキ」などが含まれる。産業商務省は対象店舗の選定基準について、a.付加価値税を納税している、b.2年以上事業を行っている、c.税金の滞納がない、d.高額製品の取り扱い、などを挙げる。ウラジオストクの指定数は多いが、商業規模ではモスクワ、サンクトペテルブルクとは比較にならず、極東振興策の一環として同市の対象を増やした可能性がある。

ロシアの旅行業界も、今回の決定を歓迎している。ロシア旅行産業連盟のセルゲイ・シピリコ会長は「旅行ツアーを提案すれば、外国人旅行客を受け入れることができる。(リストに記載された)限定された都市だけでなく、カザンやハバロフスク、国境地域などにも対象が広がってほしい」とコメントした(インターネットメディア「RATAニュース」11月29日)。別の旅行会社社長も、狙いは中国や東南アジアの旅行客で、「これからはロシアを欧州までの単なる中継地点と思わなくなるだろう」と、観光客の増加に期待を寄せている。

(注)ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、アルメニアの5カ国。

(高橋淳)

(ロシア)

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