極東での大規模投資、法人税の優遇期間を延長-極東発展相はTORと自由港外にも優遇措置を柔軟適用の意向-

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2017年12月04日

プーチン大統領は11月27日、ロシア極東を対象とした「優先的社会経済発展区域(TOR)」とウラジオストク自由港の大規模投資案件については、企業利潤税(法人税)の優遇適用期間を延長する法令に署名した。また、ガルシカ極東発展相は、TORと自由港の優遇措置をこれら地域外の投資案件にも柔軟に適用する方針を打ち出した。

規模により最長19年間の優遇適用に

プーチン大統領が署名したのは、連邦法「ロシア連邦国税基本法第2部284条第4項の修正について」で、ロシア政府が投資促進政策の一環として設置したTORとウラジオストク自由港の税制優遇制度のうち、投資規模によって企業利潤税(法人税)の優遇期間を延長する内容。具体的には、a.5億ルーブル(約9億5,000万円、1ルーブル=約1.9円)以上の投資案件で、TORもしくは自由港指定地域の対象企業に認定されたのち3年以内に利益を計上できない企業は、4年目から10年間の優遇税制(5年間は無税、以後5年間は低減税率)が適用され、合計で13年間の優遇税制の適用を受けることができる、b.投資額が10億ルーブル以上で、かつ認定後5年で利益が出ない場合は、10年間の優遇期間が同じく6年目から適用される(合計の適用期間は15年)、c.1,000億ルーブル以上の投資案件で認定後9年間利益が出ない場合は、優遇税制は10年目からの適用となり、合計で19年間の適用、などだ。

適用期間延長の対象となる投資案件としては、アムール州のTOR「スボボドヌィ」に天然ガス採掘大手ガスプロムと石油化学大手シブールが建設中の天然ガス加工・化学コンビナート(投資総額6,900億ルーブル)、沿海地方のTOR「ナデジディンスカヤ」に建設予定のヘリウムコンテナの輸送ターミナル(50億ルーブル)などが想定されている。

大規模投資の採算性改善が目的

今回の延長措置の目的は、大規模投資案件の採算性の改善だ。ガルシカ極東発展相は「大規模投資は長期の免税措置を提供することで、投資回収期間を短縮でき採算性が向上する。投資額が大きく資本投下の期間が長い場合、投資の利益が出る前に優遇期間が終了してしまう」と説明。税制優遇の延長で償却期間の短縮を支援し、企業がより大規模な投資に踏み切れるようにする。

TORでの企業利潤税の優遇措置については、8月3日にアムール州で開催された会議で、ガスプロムのミレル会長がプーチン大統領に対し、「プロジェクト実現に向けた経済効率は税制に大きく依存している」と政府による支援を要請。プーチン大統領も9月7日にウラジオストクで開催された第3回東方経済フォーラムで、「長いサイクルの投資案件では、(他のプロジェクトにも増して)採算が成り立つようにする必要がある」と述べ、9月27日付でメドベージェフ首相にTORと自由港制度の優遇税制拡大を指示していた。

優遇適用地域は柔軟に運用

現在、優遇税制の対象はTORと自由港指定地域の認定企業だが、今後行われる投資案件については地域的な条件がなくなる可能性がある。11月28日にモスクワ州で開催された「ロシア極東・バイカル地域の社会経済発展問題に関する政府委員会」の会見で、「TORや自由港地域外に所在する企業投資に対し、政府の支援や優遇税制はないのか」との質問に対し、ガルシカ極東発展相は「現在(TOR域外の)ハバロフスク地方で建設が予定されているパルプ工場についても、TORによる優遇適用が議論されている。投資家は投資案件を実現する最も良い場所を知っており、その場所にTORを拡大させる。TOR外の企業にも大きな注意を払っている」と述べ、優遇適用について投資家のニーズに沿って柔軟に対応する意向を示した。

また、トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表は、モスクワで12月8月から16日に初めて開催される「ロシア極東の日」について、「モスクワには1,200万人おり、ロシア極東で事業を起こせる人々もいる。人々に極東の大きなプロジェクトや経済環境、極東に適用されている優遇制度について説明したい」と述べ、モスクワをはじめとするロシア欧州部からの人の流れの拡大に期待を示した。

(高橋淳)

(ロシア)

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