食品サンプルの輸入手続きが一部明確に-官民会合のフォローアップ調査で判明-

(ベトナム)

ホーチミン発

2017年12月15日

進出日系企業はさまざまな問題に直面しており、食品分野では輸入関連手続きに関する当局の対応への不満が多い。ジェトロは「海外連絡協議会」(農林水産省からの受託事業)の活動の1つとして、在ベトナム日系食品関連企業とベトナム政府関係者との官民会合を聞き、さらにフォローアップ調査も行い、問題の解決に努めている。9月の同調査では、サンプルの輸入手続きの一部が明確になった。

サンプルと認められれば検査はなし

3月に開催した官民会合で日系企業は、食品輸入に係る手続きや税関の対応について2項目の改善要望をベトナム当局に求めた。1つは、試作や研究のサンプルとして食品を輸入する場合の検査対象の明確化だ。これらサンプル輸入の際、法令で明確な基準がないものの、重量が5キロを超える場合には検査手続きが求められる傾向がある。日系物流会社の中には、自主規制として5キロを目安に輸入業者に検査を求めている企業もある。

官民会合では、保健省食品安全局法務部の担当者から「サンプル輸入において重量規制はない」との回答を得たが、9月に実施したフォローアップ調査で新たな事実が判明した。同部副部長のトラン・ニャット・ナム氏によると、各企業が輸入時に、食品安全局に対して輸入品がサンプルである旨を説明して認められれば証明書が発行され、検査なしで通関できるという。また、商品によっては商工省(加工乳や酒類など)や農業農村開発省(農産物や生乳)が主管することはあるものの、手続きは同様とのことだった。この手続きは関係機関のウェブサイトで公表されておらず、日系企業にはあまり知られていないが、以前から存在し機能しているという。現在、保健省を中心に政令38/2012/ND-CP(食品安全法55/2010/QH12の細則)の改正を検討しており、手続きが変更となる可能性はあるが、食品関連企業の当地での研究開発にはプラスといえるだろう。

サンプル採取の際には覚書を交換

2点目は、食品通関でHSコード確認のために採取されるサンプル量の明確化だ。果物では「10個のうち3個取られた」など、食品の通関時に採取されるサンプルの量が多かったり、魚や食肉などでは「重要な部位が採取されてしまう」という声が聞かれている。そこで、フォローアップ調査時に税関総局に対して、(1)サンプル採取は量・頻度とも必要最小限にとどめ、検査上特段の理由がない限り高価な部位からは採取しないよう徹底することと、(2)採取したサンプルが適切に処分されていることの確認体制の開示を要求した。

税関総局監査管理1室のダオ・ディ・タム室長によると、検体としてサンプル採取する場合、最低ロットは決まっていないが「分析用」と「保管用」の最低2つを採取し、かつその際は覚書が交わされることになっているという。覚書の調印者は、企業(申請者)と税関の2者か、検疫や食品安全面で検査が必要な場合は該当機関を加えた3者で、どの機関がサンプルを採取するのか覚書に記載されることとなっている。保管用については、企業から疑義があった際に再検査するためのものであり、問題がなければ90日以内に返却されるという。タム氏室長は、税関総局のサンプル採取はHSコードの判定が目的であり、牛肉など目視で判断できるものについては採取の必要はないという。これらについては通達38/2015号および通達14/2015号で規定されており、サンプルを返却しなかったり、意図的に覚書を交わさないケースなどについては、「指導対象となるので、監査監理室まで通報してほしい」と述べた。

エージェントが採取に関与か

なお、今回のフォローアップ調査におけるベトナム側関係者の話では、輸入業者が通関や輸入に係る許認可を含めた手続きを物流事業者やエージェントに一任しているケースや、荷主が物流事業者に依頼したとしても、関連手続きは物流事業者がエージェントに任せている場合もあり、そうしたエージェントがサンプルの採取に関わっている可能性もあるとのことだった。

(佐々木進伍)

(ベトナム)

ビジネス短信 56624a2f7688c726