FTA未締結国からの輸入関税、2018年から引き上げか-日系企業の懸念を政府に申し入れ-

(モロッコ)

ラバト発

2017年12月05日

国会で2018年予算法案が審議されており、この中には自由貿易協定(FTA)域外からの輸入関税を引き上げる条項が含まれている。一部の条項は削除される可能性があるものの、関税率が引き上げられる見通しの品目については、モロッコとFTA未締結の日本も対象になる。ジェトロは在モロッコ日系企業の懸念の声を受け、現地日本大使館と協力して政府に法案の詳細説明を求める申し入れを行った。

国内産業の強化と財政赤字縮小が目的

政府は10月17日の閣議で、輸入関税率引き上げを含む2018年予算法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を決定し、議会に送付した。同法案の第4条では、2018年1月から関税率を、17.5%の品目は20%、25%の品目は30%にそれぞれ引き上げるとしている。同法案によると、日本や中国、韓国などモロッコとのFTAが締結されていない国がその対象となる。現行の関税率が17.5%の輸入製品には自動車・同部品などがあり、25%の製品にはコーヒー、たばこ、服飾品などの一般消費財のほか、タイヤなども含まれている。関税率引き上げの理由としては、国内産業の強化および税収増による財政赤字の縮小と報道されている。

モロッコ国会は衆議院と参議院の二院制を取っているが、同法案は一部修正を経て11月17日に衆院を通過した。17.5%から20%への引き上げ措置については、国内でもFTA締結国と非締結国の間に不均衡をもたらすとの懸念が出ており、複数の現地報道によると、同措置は衆院で削除されており、現行の17.5%が維持される見通しだ。一方、25%から30%への引き上げ措置については、両院で修正なしに可決される可能性が高く、25%の関税率が適用されている全ての製品が対象となる。同法案は参院で審議中で、順調に進めば12月後半に成立し、2018年1月1日付で施行される見通しだ(注)。

商材を輸入している日系企業に影響

11月現在、モロッコに拠点を置く日系企業は約50社あるほか、代理店を通じた日本車販売なども行われている。ジェトロのヒアリング調査によると、北部タンジェなどの輸出フリーゾーンに拠点を置く日系自動車部品メーカーへの影響はないとされる一方、日本およびアジアを中心としたFTA非締結国から商材を輸入している多くの日系企業にとって、関税率引き上げの影響は大きい。このような日系企業の懸念の声を受け、ジェトロが現地で事務局を務める在モロッコ日系企業連絡会(BCJC)名で、モハメッド・ブーサイド経済・財政相宛の意見書を在モロッコ日本大使館経由で発出し、同法案に対する詳細の説明を求める申し入れを行った。同事務所および同大使館は、本法案の動向を注視し情報収集に努めている。

(注)品目詳細は、モロッコ税関・間接税庁のHSコード表エクセルファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照。

(井上尚貴)

(モロッコ)

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