模倣品輸入の水際対策に日系企業も期待-知的財産権保護セミナーを共催-

(パキスタン)

カラチ発

2017年11月01日

ジェトロと在カラチ日本総領事館は10月19日、カラチ市内で知的財産権保護セミナーを共催した。4月に発足した連邦歳入庁知的財産権執行局(DGIPRE)の担当官が、知的財産権の保護制度などについて講演した。参加した日系企業関係者からは、水際対策を行う新組織と体制に期待する声が出ていた。

新設の知的財産権執行局が水際対策を担う

パキスタン政府は4月、模倣品流入に対する水際対策を行う組織として、連邦歳入庁(FBR)内に知的財産権執行局(DGIPRE)を新設した。この数年、パキスタンの知的財産権保護に対する日本企業の関心は高まっており、日本企業の商品の模倣品とみられるコンテナ貨物が陸揚げされる事案が発生したこともある。

今回のセミナーは、DGIPREが実施する模倣品対策を紹介するとともに、同局と日系企業との連携強化を目的に開いた。

講演したジェトロ・カラチ事務所の久木治所長は、「日本企業がパキスタンへの投資や事業展開を検討する上で、知的財産権保護は重要な要素の1つ」とした上で、模倣品の製造者・販売者の多くが正しく納税しておらず、真正品の取引を推進することが政府の歳入増にもつながると指摘。「知的財産権の保護は、メーカーだけでなく、政府にとってもメリットが大きい」と強調した。

パキスタン知的財産機構と協力して調査

DGIPREのアミール・シャイク課長とヒナ・グル課長補佐は、DGIPREの役割、模倣品流入に対する取り組みなどについて説明した。同局は、模倣品の水際対策を中心に、知的財産権保護に関する取り組みを実施している。

DGIPREは知的財産の管理を行うパキスタン知的財産機構(IPO-Pakistan)と連携して、企業が自社の知的財産権を侵害された場合、DGIPREは申し立てに基づき協力して調査を開始する。ただし、申し立てを行うまでに商標などの知的財産の登録が完了していることが条件だ。

模倣品の取り締まりを行うに当たっては、真正品との見分け方についての情報が必要で、DGIPREはセミナー参加者に対し積極的に情報提供を求めた。日系企業(製造業)は「模倣品の流入に困っていたため、水際対策担当官と直接意見を交換でき、非常に助かった」と述べ、日系企業(貿易業)も「これまで模倣品の取り締まり窓口がなく諦めていたが、今後は(DGIPREと)長期的な連携関係を構築していきたい」と話していた。

パキスタン政府が、知的財産権保護に関する法制度を本格的に整備し始めたのは2000年以降で、模倣品輸入に対する水際対策は他国に比べて歴史が浅い。政府としてはDGIPREの設立を契機として、流入が増加している状況下、模倣品対策を強化したい方針だ。

(野上活)

(パキスタン)

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