新エネルギー車の製造・販売を義務付け-2019年に10%、2020年に12%の達成目標-

(中国)

北京発

2017年11月13日

工業・情報化部などは、9月27日付で「乗用車企業の平均燃費と新エネルギー車クレジットの並行管理弁法」を公布し、2018年4月1日から施行する。乗用車を3万台以上生産または輸入・販売する企業は、2019年から一定比率の新エネルギー車を生産または輸入・販売することが求められる。

乗用車3万台以上を生産・販売する企業が対象

工業・情報化部、財政部、商務部、海関(税関)総署、国家質量監督検査検疫総局は、9月27日付で「乗用車企業の平均燃費と新エネルギー車クレジットの並行管理弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公布し、2018年4月1日から施行するとした。2016年9月、2017年6月の2回の意見募集(パブリックコメント)を経て、正式に公布された。同弁法により、中国でガソリン、ディーゼルなどを燃料とする乗用車を年間3万台以上生産もしくは輸入・販売する企業は、一定比率の新エネルギー車を生産または輸入・販売することを求められる。

具体的には、当該年の生産量もしくは輸入量に2019年は10%、2020年は12%を乗じたものを必要クレジット(基準値)とし、新エネルギー車の種類・性能に基づいて付与されるクレジットとその生産量もしくは輸入量の積の和(実際値)で満たすよう求めている(注1)。2021年以降の基準値算出のパーセンテージは、工業・情報化部が別途定めるとした。2017年6月に発表された意見募集稿では2018年から8%を義務付けることになっていたが、業界からの要望もあり、導入時期を後ろ倒しした。また、同稿では、目標を課す対象を、ガソリン、ディーゼルなどを燃料とする乗用車を年間5万台以上生産または輸入・販売する企業としていたが、これを前述のとおり3万台以上に引き下げ、対象範囲を広げた。全国乗用車市場情報聯席会の崔東樹秘書長はこの対象範囲拡大について、業界の合併・再編、優位性のない企業の淘汰(とうた)に有利に働くほか、販売量を抑えて規制対象から外れることで新エネルギー車の販売責任を逃れようとしている輸入車販売会社にとって圧力になると述べた(中国経済網9月28日)。

クレジットの過不足については市場取引が可能で、自社が基準値を満たせなかった場合は、他社からクレジットを購入して満たすことになる。未達成の場合は、工業・情報化部に生産もしくは輸入の年間調整計画を提出する必要がある。ちなみに、2019年については、2020年のプラスのクレジットでマイナスを相殺できるとしたほか、2019年のプラスのクレジットを2020年に限り繰り越しできるとした。2020年以降は翌年のプラスのクレジットとの相殺、翌年へのプラスのクレジットの繰り越しはできない。

クレジット獲得の対象となる新エネルギー車は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)だ。日本企業が優位性を持つハイブリッド車(HV)は対象外となった。

また、同弁法では、企業平均燃費(注2)についても当該企業の基準値と実際値の差をクレジットとして管理することとし、実際値が基準値を下回った場合はプラス、上回った場合はマイナスにカウントする。マイナスとなった場合は、一定の資本関係のある関連企業からプラスのクレジットを譲渡してもらうか、他社から新エネルギー車のプラスのクレジットを購入することによってマイナスを相殺する必要がある。未達成の場合は、新エネルギー車のクレジット管理と同様に、工業・情報化部に生産もしくは輸入の年間調整計画を提出し、翌年に発生する見込みのプラスのクレジットで当該年のマイナスを相殺する必要がある。企業平均燃費のプラスのクレジットは、条件付きで繰り越すことができる。

なお、今回の規制をはじめとする新エネルギー車に関する政策については、ジェトロセンサー「中国で急速に進む新エネルギー車へのシフト」でも紹介している。

2025年の目標は20%、700万台に

深刻な環境汚染を背景として、中国政府は新エネルギー車の導入を加速している。2017年4月に、工業・情報化部、国家発展改革委員会、科学技術部は「自動車産業中長期発展規画」を発表し、新エネルギー車の年間生産、販売台数を2020年までにいずれも200万台に引き上げ、2025年には生産、販売台数に占める割合を20%とする目標を設定した。同規画では、2025年の生産目標が約3,500万台に設定されており、同年に700万台の新エネルギー車の生産達成を目指しているといえる(2017年5月24日記事参照)。2016年の新エネルギー車の生産台数は前年比51.7%増の51万7,000台で、中国政府は今後急速に新エネ車市場を発展させようとしている。

2017年6月に公布された「外商投資産業指導目録(2017年版目録)」においては、外国人投資家と中国側の合弁パートナーが、純EVの完成車を生産する合弁企業を設立する場合、「同一の外国人投資家が同類の完成車を生産する合弁企業を中国国内で設立できるのは2社まで」とする制限を受けないとした(2017年8月14日記事参照)。規制緩和を受けて、外資大手は新エネルギー車市場での取り組みを強化している。フォルクスワーゲン(VW)は6月に現地メーカーの安徽江淮汽車(JAC)と、フォードは8月に同じく現地メーカーの衆泰汽車とEVを共同開発・生産する合弁会社を設立すると発表した。両社にとって、中国メーカーとの提携は3社目となる。

また、英国とフランスが2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する方向性を打ち出している中、中国でも工業・情報化部の辛国斌副部長が9月に天津市で開催された自動車産業の発展フォーラムにおいて、「一部の国家が既に伝統的エネルギー車の生産・販売の停止スケジュールを制定している。現在、工業・情報化部も関連の研究を始めており、関連部門と中国のスケジュールを制定するだろう」と発言するなど、英仏と同様の方向性を示している(「億欧」9月9日)。

今回の管理弁法など中国政府が進める一連の政策を受けて、中国における従来型エネルギー車から新エネルギー車へのシフトが、どの程度の速度で進むことになるのか、今後の動向が注目される。

(注1)新エネルギー車クレジットにおいては、実際値が基準値を上回った場合はプラス、下回った場合はマイナスとカウントする。

(注2)燃費とは、走行距離当たりの燃料消費量を指す。

(宗金建志)

(中国)

ビジネス短信 33c72e91be2911a0