中国製H形鋼にAD措置を発動-期間は2022年9月までの5年間-

(ベトナム)

ハノイ発

2017年10月02日

ベトナム商工省は8月21日、鉄鋼製品のH形鋼に対してアンチダンピング(AD)関税を課すことを決定した(商工省決定3299/QD-BCT号)。対象国は中国(香港を含む)で、期間は2017年9月5日~2022年9月5日の5年間となっている。

AD関税の税率は20.48~29.17%

アンチダンピング(AD)関税は、「他国が不当に安い価格(不当廉売)で輸出した場合、輸入国政府が国内産業を保護するために課す関税」で、当地の所管官庁は、8月に商工省の部局再編により新設された貿易保護庁となっている。国内法は、国会常務委員会法令20/2004/PL-UBTVQH11号(2004年4月29日付)および政令90/2005/ND-CP号(2005年7月11日付)に基づく。

H形鋼は断面が「H」の鋼材で、耐震性・耐久性に優れており、建設用、特に岸壁、ビル、橋などの基礎工事で利用されている。日本では、体育館、ショッピングモール、空港などにも使われているが、ベトナムではそれほど普及していないといわれている(当地日系商社)。

今回対象となるH形鋼のHSコードは、7216.33.00〔輸入関税:WTO税率15%、ASEAN中国自由貿易協定(ACFTA)5%〕、7228.70.10(15%、0%)、7228.70.90(15%、0%)の3品目で、課税率は対象となる輸出元の企業によって異なる。具体的な課税率は、(1)20.48%、(2)22.09%、(3)29.17%の3つで、(1)、(2)は対象とされる輸出元企業、(3)はベトナム側のAD調査に協力しなかった企業の税率となる。

上記品目の輸入には原産地証明書(C/O)が必要で、ない場合は29.17%のAD関税が課される。C/Oが中国以外で発給された場合はAD関税適用除外となるが、中国で発給された場合は、追加書類として生産者の品質証明書であるミルシートまたは同等の書類の提出が必要となる。これらの書類がない、もしくはあったとしてもAD調査に協力しなかった企業には29.17%のAD関税が課される。

中国からの輸入が9割超す

H形鋼のAD措置に関しては、2016年6月6日と7月7日に、当地の韓国系鉄鋼メーカーであるポスコSSビナが商工省に提訴、同省は2016年10月5日付で中国から輸入されるH形鋼に関するAD調査を開始した(同省決定3599/QD-BCT号)。同省は2017年3月21日に、4月5日から8月2日まで120日間の暫定AD関税(26.18~36.33%)を課すと決定(同省決定957/QD-BCT号)していた。

商工省決定3299/QD-BCT号の報告書によると、2015年の上記品目の国内需要は32万2,391トン(前年比31.2%増)で、そのうち国内製は21.71%にとどまっている。一方、中国製は、2015年第2~4四半期が輸入の9割弱、2016年第1四半期は9割を超えており、ベトナム鉄鋼業界に影響を与えていると判断したものとみられる。

今回商工省がAD措置に踏み切ったのは、国内でポスコSSビナが製造しているH形鋼が、国内で広く利用されていると判断したためだ(上記報告書)。また、同品目の国内生産を保護し、国内製品を流通させることで、中国との多額の貿易赤字を削減させる狙いもあるといわれている(前述の日系商社)。

(佐藤進)

(ベトナム)

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