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EU、デジタル時代に対応した各種基盤整備を急ぐ-DSM戦略を推進するエストニアのイニシアチブを評価-

(EU)

ブリュッセル発

2017年10月24日

ブリュッセルで10月19~20日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)では、EUとしてのデジタル社会構築の在り方が協議され、各種基盤の整備を急ぐことになった。2017年下期(7~12月)のEU議長国を務めるエストニアは欧州理事会に先駆けて、9月29日に「タリン・デジタル・サミット」、10月16~18日には「健康・医療のためのデジタル社会」と題するシンポジウムを開催するなど、EUが推進するデジタル単一市場(DSM)戦略の具体化に熱心だ。欧州理事会は、こうしたエストニアの取り組みがより強固で一貫性のあるデジタル社会の必要性を強くアピールしたと、同国のイニシアチブを評価した。

デジタル社会構築に向けた目標や課題を明示

欧州理事会は10月19日、会議初日の協議結果を発表した。この中で、EUとしてのデジタル社会構築の方針・目標についても総括された。同総括によると、(1)デジタル時代に対応した電子政府の確立、(2)DSM戦略実現のための法制度整備、(3)大容量・高速データ送信網の整備、(4)サイバーセキュリティーのための連携強化、(5)テロやインターネット犯罪への対策、(6)デジタル時代に対応した教育・職業訓練・労働市場の整備、(7)研究開発・投資の活性化、(8)人工知能(AI)やブロックチェーン(分散台帳システム)など新たな技術への迅速な対応、(9)デジタル時代に対応した公正な税制の確立について、EUとして取り組む必要があるとしている。

欧州理事会は、(1)電子政府は「社会を変革するカギを担い」、(4)サイバーセキュリティーは「デジタル社会が求める信頼を醸成する唯一の手段」などとして、これらの個々の課題の重要性を強調し、導入のための基盤整備を急ぐ姿勢を鮮明にした。また、これらの目標を実現するためのEUとしての法令制定や、EU加盟国による国内法の整備も求めた。

先端通信プロジェクトで存在感示すエストニア

2017年下期のEU議長国を務めるエストニアは、欧州を代表する電子政府先進国として知られる。同国のユリ・ラタス首相は今回の欧州理事会で、DSM戦略の推進を各国首脳に働き掛け、同国の議長国就任期間中には同戦略の実現に何らかの道筋を付けたいとの認識を示している。

エストニアは10月20日に発表した議長国声明でも、DSM戦略推進の具体策について発表している。これによると、「(DSM戦略の)少なくとも特に重要な3課題に関わる法案については欧州理事会、欧州議会と議長国就任期間中に合意したい」としている。具体的には、(1)不公正なジオブロッキング(EU域内の特定国の顧客に対するオンライン販売を制限・差別する行為)の禁止、(2)「視聴覚メディア・サービス指令(2010年)」の見直し、(3)小荷物の越境配送の円滑化、についての法制化を急ぐ考えだ。

また、ラタス首相は「第5世代移動体通信(5G)ネットワークの開発について、欧州議会とも協議を始める用意がある。5Gネットワークは大容量データの高速送信に適しており、自動運転技術の普及促進に貢献する」と語っている。こうした中、スウェーデンの通信機器大手エリクソンは9月29日、スウェーデンの通信サービス大手テリアのエストニア法人および米国半導体最大手のインテルと連携し、欧州で初めてとなる5Gネットワークの試験運用を、エストニアのタリン港を利用するクルーズ船舶(運航事業者:タリンク)で開始した。同日、首都タリンにはEU各国首脳が「タリン・デジタル・サミット」に参集していたこともあり、先端的通信プロジェクトにおけるエストニアの存在感をアピールする格好の機会となった。

シンポジウムでデジタル時代の医療サービスの在り方を討議

このほか、タリンでは10月16~18日の3日間、エストニア政府(社会問題省)主催の「健康・医療のためのデジタル社会」と題するシンポジウムが開催された。(1)EU市民のニーズに応える医療サービスの電子化、(2)高い付加価値を生み出す持続可能な電子医療サービスと社会システム、(3)イノベーションに貢献する電子医療サービス、の3点を主要議題とし、今後の電子医療サービスの在り方が討議された。

エストニア社会問題省は、精緻な遺伝子情報や個々の病状・症状に応じて最適な治療や投薬の方針を導く個別化医療サービスの重要性を指摘し、現在その実践に向けたプログラムを推進している。膨大なデータの収集・解析が前提となる個別化医療サービスの実践にはデジタル技術の活用が不可欠で、個々の症例など多種多様な医療データへのアクセスとその情報蓄積は社会的に重要な資産となる。しかし、これら個々の医療データは同時にEUとして厳格な保護を求めている個人データそのものであり、健康・医療の最適化という社会的な要請と、個人データの適切な処理・管理の両立が問われることとなる。

(前田篤穂)

(EU)

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