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太陽光発電パネルの輸入による国内産業の損害を認定-セーフガード発動ならカナダ以外の全ての国が対象に-

(米国)

ニューヨーク発

2017年09月29日

米国際貿易委員会(USITC)は9月22日、太陽光発電パネルの輸入に関するセーフガード措置の発動調査に基づき、国内産業の損害を認定した。10月3日に公聴会を実施し、11月13日までに具体的な措置内容の勧告を含めた報告を大統領に行う。大統領はこれを受け、関税引き上げなどの対応を取ることができる。セーフガード措置が発動されれば、カナダを除き、日本を含む全ての国からの輸入が対象になる。

大統領の判断で関税引き上げが可能に

USITCは9月22日、結晶シリコン系太陽光発電パネル(モジュール化されたものも含む)に対する緊急輸入制限措置(セーフガード措置)の発動調査に基づき、同製品の輸入増加が国内産業の重大な損害の実質的要因になっていると認定した。

1974年通商協定法201条PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、USITCによる損害認定(国内産業への重大な損害またはその恐れの存在の認定)に基づき、一定期間(原則4年、最長8年)に限り、全ての輸入国に対して特定産品にかかる関税の引き上げや関税割当などのセーフガード措置を発動する権限(注1)を大統領に与えている。USITCは10月3日に公聴会を実施し、11月13日までに措置内容の勧告を含めた報告を大統領に行う。大統領にはUSITCからの報告受領後60日以内に措置の内容(実施の有無を含む)を決定し、決定後15日以内に措置を実施することが求められている。

なお、大統領はUSITCの勧告内容に従うかを裁量で判断する。ただし、大統領がUSITCの勧告と異なる措置を実施する場合や措置を発動しない場合には、議会は共同決議によりセーフガード措置を実施することができる。

今回セーフガード措置が発動されれば、ブッシュ(子)政権が2002年3月、日本を含む他国からの鉄鋼輸入に対して通常の最恵国(MFN)関税に加えて8~30%の関税を課すセーフガード措置を発動して以来となる。

ホワイトハウスは何らかの措置を示唆

今回の調査を要請した太陽光パネル製造企業2社はUSITCの認定を歓迎し、セーフガード措置を発動するよう政権に強く促している。スニバ(本社:ジョージア州)は「太陽光発電装置の製造能力を米国が今後も維持し続けられるかは大統領次第だ」との声明を発表した(「ニューヨーク・タイムズ」紙9月22日)。独ソーラーワールドの米国子会社ソーラーワールドアメリカス(本社:オレゴン州)は、今回のUSITCの認定を受けて米国内での生産増強を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、2018年5月までに200人を、最終的には500人を追加で雇用すると宣言している。

一方、米国太陽エネルギー産業協会(SEIA)は、USITCの認定を批判する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、関税賦課や輸入品に対する最低価格の導入などスニバが提案する貿易救済案が通れば、太陽光発電パネルの価格は2倍になり、2018年には8万8,000人の雇用が失われると主張している。同協会には太陽光発電の関連装置製造企業や設置企業などが加盟している。SEIAのアビゲイル・ホッパー代表はまた、他国がWTOに米国を提訴する可能性があると指摘している(注2)。

ホワイトハウスのナタリー・ストローム報道官は「大統領は米国の利益を最大化する決断をする」「米国の太陽光パネル製造企業はわれわれのエネルギー安全保障と経済的な繁栄に貢献している」と述べ、政権が国内の製造業保護に向けた何らかの措置を取る可能性を示唆した(ロイター9月22日)。

外交問題評議会(CFR)シニアフェローのエドワード・アールデン氏は「トランプ大統領は利用できる全ての機会に輸入関税を賦課することを強く望んでいる。輸入制限が導入されることは明らかだ」と述べている(「USインサイドトレード」9月26日)。

カナダからの輸入は適用の対象外

米国が締結する一部の自由貿易協定(FTA)の実施法には、一定条件の下(注3)、加盟国に対するセーフガード措置の適用を除外する規定が盛り込まれている。USITCが北米自由貿易協定(NAFTA)で定められた条件に照らして審査したところ、カナダは今回のセーフガード措置の適用から除外、メキシコは措置の対象となっている。トランプ政権はNAFTAの再交渉で、同除外規定(NAFTA協定802条)の撤廃を求めているが、カナダとメキシコは反対している(2017年7月21日記事参照)。

その他の国からの輸入については、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)シニアフェローのチャド・バウン氏が、中国からの太陽光パネルの輸入は既に既存の貿易救済措置の対象になっているため、今回のセーフガード措置の影響は比較的少なく、韓国、メキシコ、日本、欧州、シンガポール、マレーシアからの輸入に対する影響の方が大きいと分析している(「ニューヨーク・タイムズ」紙9月22日)。

USITCは現在、家電製造ワープール(本社:ミシガン州)の要請に基づき、大型家庭用洗濯機に対するセーフガード措置の発動についても調査をしており、10月5日までに国内産業への損害認定が下される予定になっている。

(注1)大統領が取り得る措置は1974年通商協定法203条(a)(3)項で規定されている。これらの措置には、関税の賦課・引き上げ、関税割当・輸入割当の実施のほか、外国との通商交渉による解決や国内の産業構造調整に向けた援助措置の実施などが含まれる。

(注2)セーフガード措置は、WTOのセーフガード協定でも規定されているが、その発動には輸入増加と国内産業の損害の因果関係を証明することなど厳しい条件が課されている。ブッシュ(子)政権が2002年に発動した鉄鋼セーフガードでは、米国はWTOで敗訴しており、2003年に関税を撤廃している。

(注3)NAFTA実施法311条は、カナダあるいはメキシコからの輸入が輸入全体の大部分を占め、産業に重大な損害あるいはその恐れをもたらしている場合を除いて、両国からの輸入にセーフガード措置を適用してはならないと規定している。上述のブッシュ(子)政権による鉄鋼セーフガードでは、同規定に基づき、メキシコとカナダからの輸入は適用除外になっている。

(鈴木敦)

(米国)

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