製品流通と情報保護のポジションペーパーを公表-英政府、製品流通では継続性担保を志向-

(英国)

ロンドン発

2017年08月23日

政府は8月21日、英国とEU加盟国に流通している製品の取り扱いおよびEU加盟国として得てきた情報の機密性と取り扱いについての2種類のポジションペーパーを公表した。製品の流通については、英国のEU離脱前に双方の市場に投入されていれば、その後のEU・英国間の流通や販売活動に追加的な要求事項を課さないとする考えなどが示された。また、EU加盟国として得た機密情報の取り扱いについては、EU離脱後も双方が同等水準の機密保持を行うとする考えが明らかになった。

既に販売された製品に追加要求を課さず

新たな2種類のポジションペーパーは、8月28日からの第3回EU離脱交渉の実施に先立ち公表された。

まず、製品の流通については4つの考え方を柱とする。1つ目として、英国のEU離脱前に英国とEU加盟国の市場で販売が開始された製品については、追加的な要求事項や制限を課されることなく、EU・英国市場間で自由に販売できるとする。これに基づけば、EU離脱後も製品のラベル表示に変更を加える必要がなく、取得済みの認証などが継続して有効となる。また、EUの製造規制上、責任者を置くことが必要な化粧品や医薬品製造の場合、EU離脱前に市場に投入された製品の責任者は、英国とEU加盟国のいずれに拠点を置こうとも、引き続き両市場の責任者としての役割を果たすことができる。

2つ目に、EU離脱前に取得した許認可などは離脱後も有効で、同等の許認可を再度取得することは不要とする。EU加盟国に流通する製品はその製造過程においてEU認証機関による査察受け入れや書類提出などを求められる場合もあるが、時間やコストを要するこれらの対応に再度迫られる必要がなくなる。例えば、EU離脱前に承認を得た自動車の型式は、離脱後も英国・EU双方の市場で有効となり、EU離脱前に発注されたものの製造には至っていないような製品でも、その製造・販売が可能となる。

3つ目として、引き続き消費者保護を重視し、法令順守を怠った場合や安全性に欠陥があるような製品に対して必要な措置を取る考えが示され、製品流通のトレーサビリティーや監視体制について合意する必要があるとした。さらに4つ目として、製品供給に付随するサービスの取り扱いについても示された。製品販売や配送、あるいはそれらの管理や製品修理など製品供給に不可分なサービスの提供については、EU離脱後も制限を設けないとした。

機密情報の保護で同等性を要求

機密書類(情報)の取り扱いについてのポジションペーパーも公表された。英国は、EU加盟国の一員としてこれまでさまざまな機密情報を他の加盟国と共有してきたが、これらの情報の取り扱いについて概要を示したものだ。

ポジションペーパーでは、英国とEUの双方は、これまで相互に得てきた情報を英国のEU離脱後も、機密情報も含めて現在と同等の水準で保護すべきだとされた。EU機関などの職員は職務上得た情報の秘匿についての義務を負うが、英国・EU双方の当該職員は、英国がEU加盟国だった際に得た機密情報の取り扱いについて、英国のEU離脱後も同様の義務を負う。

このほかポジションペーパーでは、英国が作成しEUが保有している文書と、EUが作成し英国が保有している文書の開示・保護・分類などの扱いについても定める必要があることなども指摘されている。

(佐藤央樹)

(英国)

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