EU・カナダCETA、9月21日から暫定適用-ハンブルクでのG20首脳会議が後押し-

(EU、カナダ)

ブリュッセル発

2017年07月11日

欧州委員会は7月8日、EUがカナダと2016年10月30日に調印した「包括的経済貿易協定(CETA)」を9月21日から暫定適用することでカナダと合意したと発表した。6日の日本との経済連携協定(EPA)の大枠合意に続き、自由貿易を推進する強い姿勢を打ち出した。ただ、正式な発効には全EU加盟国の議会での批准が必要だ。地域政府が批准権限を握るベルギーでは、調印承認をめぐるワロン地域政府の反対で混乱した経緯もあり、CETA発効に向けた動きは将来の日EU・EPAの批准手続きの試金石ともなりそうだ。

国際貿易の重要性をG20で再確認

欧州委員会は7月8日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、EUがカナダと調印(2016年10月31日記事参照)している「EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)」の暫定適用を9月21日から開始することでカナダと合意したと発表した。加盟国の批准手続きが必要な混合協定の暫定適用は、EUが排他的権限(注)を持つ分野についてのみ、欧州議会の批准手続き後に協定全体の発効に先行して適用を開始するもので、欧州議会は2月15日(2017年2月16日記事参照)に、カナダ側は5月17日に批准を終えていた。欧州委は「EU市民や企業がCETAの受益者として、混乱なく利益を上げることが重要」とCETAへの期待を示した。

欧州委はドイツ・ハンブルクでのG20首脳会議PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で「ルールに基づく国際的貿易体制は極めて重要」との認識が再確認されたことから、CETAの暫定適用にも弾みが付いたとして、暫定適用を始める9月21日までに必要な措置を進める考えを示した。

正式発効には時間がかかる見通し

CETAの正式な発効にはEU加盟国全ての議会での批准が必要で、国内法制上の要件を満たす必要もある。ベルギーについては、批准権限を持つワロン地域(南部のフランス語圏)政府が2016年10月の調印承認に反対する一幕(2016年10月24日記事参照)もあった。最終的にはワロン地域政府は了承したが、批准手続きに向けてどのような動きが出て来るか予断を許さない状況だ。また、こうした批准をめぐる動向は、7月6日に大枠合意の発表があった日EU・EPA(2017年7月7日記事参照)の批准手続きの試金石ともなるとみられている。

ちなみに、EUの自由貿易協定(FTA)では、韓国とのFTAが関税撤廃・引き下げスケジュールなどEUが排他的権限を持つ分野について2011年7月に暫定適用を開始したが、イタリアなどの批准手続きに時間がかかり、最終的に協定全体が正式発効したのは2015年12月だった。

(注)加盟国がEUに対して権限移譲している分野。

(前田篤穂)

(EU、カナダ)

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