訪日インド人の増加に向けた取り組みを紹介-ムンバイとベンガルールで対日投資セミナー開催-

(インド、日本)

ムンバイ、ベンガルール発

2017年07月11日

ジェトロは6月22日にマハラシュトラ州の州都ムンバイ、23日にカルナタカ州の州都ベンガルールで対日投資セミナーを開催した。インドにおける対日投資プログラムの一環で、観光産業を初めてテーマとして取り上げ、日本へのインド人観光客増加に向けた取り組みの提案、地場旅行代理店の日本進出事例などの紹介があった。参加した地場旅行代理店からは、日本でのビジネスを考えるきっかけとなったなどの声が聞かれた。

インド企業の日本進出も観光ビジネスのカギ

本セミナーは、ムンバイでは日本政府観光局(JNTO)と全日空との共催、ベンガルールでは地元の商工会議所(BCIC)との共催で実施した。ムンバイ会場では野田亮二・駐ムンバイ総領事が、ベンガルール会場では北川隆行・駐ベンガルール総領事があいさつした。JNTOによると、2016年のインドからの訪日客は12万3,007人(暫定値)と、2003年比で2.6倍に拡大したが、訪日客数全体の伸びと比べると低い水準にとどまっている(図参照)。

図 訪日客数の推移

両会場で講演したJNTOニューデリー事務所の高野憲一所長は、日本の地方創生のために観光資源を有効活用しつつ、外国人観光客誘致のためのインフラを整え、2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人の訪日客を目指す計画を説明した。インド人旅行者が行き先として米国や英国などを好むのは、現地で生活する友人や親族の訪問を目的としたものだと分析し、「日本もインドからの学生や企業、レストランやホテルを誘致する必要性がある」と訴えた。さらに、インドの人気番組司会者で日本在住のインド人女性コエル・プリエ(Koel Purie)氏を起用した訪日プロモーション動画の放映や、日本でロケしたインド映画「Love in Tokyo」のリメークなど、現在実施しているインドからの訪日観光客誘致活動についても紹介した。

観光業界の対日投資を呼び掛け

セミナーでは、ジェトロの対日投資支援で日本に旅行業を設立し、インドからの観光客取り込みを開始したスーナンギ・トラベル・アンド・ツアーズの担当者が、インドの観光業界にとって日本に投資する魅力を説明した。担当者は「海外進出には現地パートナーが不可欠。ジェトロ本部には観光分野に長けたアドバイザーがいたので、英語に不自由せず非常に助かった」と述べ、「当社が取り扱うインドからの訪日客の多くは南インド出身者なので、南インドからも日本行きの直行便(現在はニューデリーおよびムンバイのみ)を就航させてほしい」と注文した。

このほか、ベンガルールの北川総領事は「日本人に対するインドのビジネスビザは有効期間が5年から10年になり、日本に来るインド人学生に対しては在学証明書があれば銀行口座の残高を示さずにビザが発行される」とビザの緩和措置を紹介した。さらに、カルナタカ州政府に対し、東京に本格的な観光情報センターを設立するよう提案。同州をアーユルヴェーダ(伝統医学)のメディカルツーリズムの拠点として宣伝し、日本からの観光客を増やしていくことができるとコメントした。

さらにジェトロは講演で、「日本は海外企業にとって世界で一番ビジネスをしやすい国を目指しており、ビザの緩和や免税の拡大、格安航空会社(LCC)の発着便の増加など規制緩和が進んでいる」と紹介。今後はインドを含むアジア地域からの投資が拡大することが予測されるため、外資系企業に対するサービスを拡大する方針などを説明した。

本セミナーには、日本の観光産業に関心のあるインド企業70社・123人(ムンバイ:16社・33人、ベンガルール:54社・90人)が出席した。参加者した旅行代理店関係者からは、「日本の観光産業の現状だけでなく先行きについても知ることができた」「日本進出に対する考え方、その利点についても学ぶことができた」など、インドからの訪日客増加を見越し日本との観光ビジネスを前向きに捉えるコメントがあった。

 写真 セミナーの様子(上:ムンバイ、下:ベンガルール)(ジェトロ撮影)

(土田葉、朝倉啓介)

(インド、日本)

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