ワイン業界など産業界や政府はおおむね歓迎-日EU・EPAの大枠合意へのスペインの反応-

(スペイン、EU、日本)

マドリード発

2017年07月13日

日EU経済連携協定(EPA)交渉の大枠合意について、スペイン政府・産業界からはおおむね歓迎の声が上がる。また国内メディアも、G20サミットに向けた米国の保護主義への牽制という文脈で好意的な報道となった。

政府は早期の最終合意望む声明

スペイン政府は7月7日、今回の大枠合意を歓迎し、可能な限り早期に最終的な合意に至ることを望む旨の声明を出した。

経済界では、スペイン経団連(CEOE)のホアキン・ガイ・デ・モンテリャー副会長が、7月6日にスペインを訪問した日本経団連との会合で、大枠合意を歓迎しつつも、まだ数カ月間にわたり技術的な詰めの作業が残っている、と述べた。

スペインワイン連盟(FEV)は「日本と自由貿易協定(FTA)を結んだ競合国の攻勢により、欧州産ワインの対日輸出は近年減少していたが、日EU・EPAが発効すればわれわれの競争力は向上する」として合意を歓迎した。

政府関係者や産業団体は、同EPAの交渉当初から実現を強く支持してきた。スペインの対日輸出は、過去5年間(2011~2016年)で32.1%増加している。重要交渉品目の農産品・食品と自動車の輸出額も、同期間にそれぞれ2.3倍、2.8倍と急増した。両国企業による投資も活発化する中、EPAがスペインにもたらすメリットは大きいとの認識がベースにある。

CETAの批准では最大野党が棄権に回る

一方、最大野党・社会労働党(PSOE)の強力な支持母体である主要労組の労働総同盟(UGT)は合意に先立つ7月5日、「日EU・EPAは、EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)と同様、不透明で反民主的だ。ILO条約をはじめとする労働者の権利保護も盛り込まれていない。欧州委員会の倫理観の欠如に対し、今後も批判を続ける」との声明を発表した。

PSOEは6月末の下院でのCETA批准法案の議決において、従来の支持方針から突如方向転換して棄権に回った。かねてFTA・EPAに否定的な急進左派の新興政党ポデモスなど、その他の左派政党は反対票を投じたが、与党・民衆党(PP)をはじめとする右派政党の賛成票で過半数を得て可決された。現在の政治状況が続けば、日EU・EPAが最終合意・調印に至った後の批准プロセスにおいても、似た流れとなる可能性がある。

(伊藤裕規子)

(スペイン、EU、日本)

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