南カリフォルニアで日系企業が雇用創出に貢献

(米国)

ロサンゼルス発

2017年06月28日

ロサンゼルス郡経済開発公社(LAEDC)の関連NPOであるワールドトレードセンターロサンゼルス(WTCLA)は6月15日、南カリフォルニアにおける海外からの投資や貢献をまとめた報告書「南カリフォルニアにおける外国直接投資2017年版(Foreign Direct Investment in Southern California,2017)」を公表した。同報告書によると、在南カリフォルニアの外国企業による雇用者数約44万人のうち、日系企業は約20%に当たる8万7,247人と、諸外国の中で最も多くの雇用を創出して地元経済に貢献していることが分かった。

雇用数、企業数、賃金のいずれも日本が1位

LAEDCが6月14~16日に、ロサンゼルス郡への投資を促進するビジネス交流イベント「Select LA Investment Summit 2017」を開催した。このイベントでは、市場のトレンドや投資機会の拡大に関するパネルディスカッションなどが行われ、ロサンゼルス市のエリック・ガルセッティ市長をはじめ地元経済関係者や海外の投資家ら350人以上が参加した。

基調講演で登壇したガルセッティ市長は「ロサンゼルスには39カ国の領事館があり、200種類の言語が話される多様な文化が存在しており、多くの国の投資を受け入れている。ロサンゼルスはバイオテクノロジーやグリーンテクノロジーといった投資が多く集まり、優れた産業が立地している」と述べ、ビジネス機会が多い地であることをアピールした。また、2024年もしくは2028年のオリンピック開催候補地となっていることに触れ、スポーツスタジアムへの投資が進むことや、交通インフラへの投資として、今後40年間で鉄道や道路に対し120億ドルの投資を行い、約50万人の雇用創出を目指しているとした。

同イベントでは、WTCLAが2016年に引き続き南カリフォルニア(注)における海外からの投資や貢献をまとめた報告書「Foreign Direct Investment in Southern California,2017」を公表し、大きな注目を集めた。

本報告書は、本国の親会社が10%以上の所有権を持つ外国企業を対象に、外国企業の貢献について、2016年の企業数、雇用者数および賃金などをまとめたものだ。同報告書によると、南カリフォルニアには外国企業が9,964社(同地域全体の1.2%)あり、その雇用者は43万9,101人(4.3%)、支払われる賃金総額は274億2,800万ドルと推定される(表1参照)。

表1 2016年の南カリフォルニアにおける外国企業の状況(郡別)
企業数
順位
雇用者数
(人)
割合
(%)
企業数
(社)
賃金推計
(100万ドル)
1 ロサンゼルス 212,512 48.4 4,682 13,248
2 オレンジ 114,001 26.0 1,998 7,103
3 サンディエゴ 58,076 13.2 1,619 3,659
4 サンバナディーノ 21,596 4.9 726 1,325
5 リバーサイド 16,211 3.7 561 1,017
6 ベンチュラ 16,705 3.8 378 1,077
合計 439,101 100.0 9,964 27,428

(注)四捨五入を含むため、合計において一致しないことがある。
(出所)ワールドトレードセンターロサンゼルス(WTCLA)
「Foreign Direct Investment in Southern California,2017」

雇用者数を国別にみると、1位は日本で8万7,247人(19.9%)、2位は英国で6万6,366人(15.1%)、3位はカナダで3万9,798人(9.1%)、4位はフランスで3万5,981人(8.2%)、5位はドイツで3万4,141(7.8%)だった。前年と比べて雇用者数、企業数の上位5カ国の顔ぶれは同じだった(表2参照)。日本は、雇用者数、企業数、従業員への賃金推計がいずれもトップで、2位以下を大きく上回った。

表2 2016年の南カリフォルニアにおける外国企業の状況(国別)(△はマイナス値)
雇用者数順位 雇用者 企業 賃金推計
(100万ドル)
2016年 2015年 人数 前年比
増減
構成比
(%)
社数 前年比
増減
1 (1) 日本 87,247 7,826 19.9 2,465 25 5,513
2 (2) 英国 66,366 11,456 15.1 1,089 △ 46 3,747
3 (5) カナダ 39,798 13,568 9.1 858 115 2,655
4 (4) フランス 35,981 3,423 8.2 689 83 2,369
5 (3) ドイツ 34,141 1,547 7.8 858 33 2,047
6 (6) スイス 24,675 △ 403 5.6 387 17 1,843
7 (9) スウェーデン 23,177 12,915 5.3 121 △ 8 1,021
8 (7) アイルランド 20,985 643 4.8 203 50 1,368
9 (13) 中国 11,221 4,771 2.6 323 △ 17 726
10 (8) オランダ 11,104 △ 3,008 2.5 216 19 727
その他 84,406 19,948 19.2 2,755 588 5,412
合計 439,101 72,686 100.0 9,964 859 27,428

(注)四捨五入を含むため、合計において一致しないことがある。
(出所)ワールドトレードセンターロサンゼルス(WTCLA)「Foreign Direct Investment in Southern California,2017」

高く評価される日本からの投資

この報告書について解説したJPモルガン・チェースの国際銀行部長モーガン・マクグラス氏は「特に日本からの投資は重要で、ソニーやホンダといった大企業だけでなく、中小企業からの投資がみられる。高齢化で国内市場の成長が鈍くなっている日本にとって、米国は市場規模や地理的な面で魅力的で、開放的で透明性の高い点も日本の企業にとって重要だ。日本が米国に持ち込んだサプライヤーのネットワークや大企業との共同投資は、両国間の経済的結び付きを増している。日本企業を親に持つ米国の企業にとっても、サプライチェーンの一部に入ることができる」と話した。

また、WTCLA社長のスティーブン・チャン氏は「米国各地で外国投資の受け入れ競争が激しく、ロサンゼルスは昨年、大きな雇用を失った。しかし、当地には優れた大学がそろっており、教育水準の高い労働力が得られるといった利点も多い」と述べ、外国投資の実態とロサンゼルスの強みを強調した。

(注)「Foreign Direct Investment in Southern California,2017」において、「南カリフォルニア」とは、ロサンゼルス郡、オレンジ郡、サンディエゴ郡、サンバナディーノ郡、リバーサイド郡、ベンチュラ郡の6郡を指す。

(北條隆、サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

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