日本の技術を生かせる商機とみる動きも-アスタナ国際博が開幕(2)-

(カザフスタン)

タシケント発

2017年06月30日

6月10日に開幕したアスタナ国際博開催に関するカザフスタンの狙いは、資源偏重の国内の産業界や市民に、再生可能エネルギーなど「未来のエネルギー」の必要性について共通の認識を持たせることにある。実際にカザフスタンで再生可能エネルギーが根付くかどうか疑問を呈する専門家もいるが、日系企業の中には日本の技術の優位性を生かせる商機と捉える動きもある。連載の後編。

開幕直前には上海協力機構サミット

カザフスタンはGDPの50.5%を鉱工業が占め、うち60.0%を石油・天然ガスやウラン、金属、鉱物などの鉱業が稼ぎ出している。輸出では鉱物性燃料と金属鉱物が全輸出額の80.1%を占めるといった、資源エネルギーに大きく偏重した経済構造だ〔2013年カザフスタン鉱物年鑑、米地質調査所(USGS)〕。ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領の2016年3月末の訪米に随行したアフメトジャン・イェシモフ博覧会公社総裁は「今日、世界中で起こっている危機はエネルギー価格が原因となっている。カザフスタンは資源大国ではあるが、未来を見据えて取り組んでいる」とし、国際博の場に再生可能エネルギーや環境問題などの世界の英知が一堂に会する意義を強調している(博覧会公社発表4月1日)。

開幕に先立ち、アスタナでは上海協力機構(SCO)首脳会議(サミット)が6月8~9日に開催された。中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領らが出席した。カザフスタンは、2010年に欧州安全保障協力機構(OSCE)の議長国を務めた。2017~2018年には国連安保理の非常任理事国を務めるほか、アジア信頼醸成措置会議(CICA)の提唱やシリア和平交渉会議の開催など、国際舞台におけるプレゼンスの発揮に余念がない。国際博開催そのものに加え、SCOサミット議長国としてロシア、中国といった大国間の利害調整に積極的に関与し、国威発揚を図ろうとしている。

省エネや環境関連ビジネスに日本の優位性

他方で、崇高な国際博の理念をビジネスとして具現化するのは簡単ではない。ロンドンに本拠を置くリスクアドバイザリーグループのシニアアソシエイトのエリック・ウィーラー氏は、カザフスタンが万博のホストを務めるのは、2050年までに世界のトップ30カ国になるというナザルバエフ大統領の野望に沿うものとしながらも、未成熟な企業統治や透明性の欠如などから「再生可能エネルギーに関連するビジネスは何一つ立ち上がる予兆はない」と指摘している(電子メディア「ザ・ディプロマット」6月2日)。

2017年5月末現在、カザフスタンに進出する日系企業数は21社(在カザフスタン日本商工会「木曜会」会員のうち、カザフスタンに拠点を持つ企業数)。この中には、ウラン資源採掘に従事する合弁企業やカスピ海の石油資源開発に参画する企業が含まれる。資源価格に回復の兆しがみられ、同国での新エネルギー関連事業推進に対する関心が薄れる恐れもあるが、日本企業としては、北九州市が得意とする製鉄所など重厚長大型エネルギー多消費産業に対する省エネ技術の提案(注)や、「日本の技術の優位性を示し得るのは、アルマトイ市内のスモッグ対策」(在アルマトイ日系企業)といった環境分野を含めたエネルギー関連事業で商機をうかがっている。

(注)ジェトロは北九州市とともに、2012年度に地域間交流支援(RIT)事業でカザフスタンの鉄鋼産業に関する調査を実施。2013年7月にジェトロと北九州市は連携協定を締結し、海外企業の省エネルギー、生産性向上に寄与する技術や設備の販路拡大、ならびに都市環境インフラの輸出など、北九州地域特有の海外展開を推進している。背景として、北九州地域には鉄鋼をはじめ機械・電機の産業基盤があり、それらに関連する高度な製品・技術を持つ企業が集積していることがある。また長年、鉄鋼産業を支えてきた中小企業の技術は省エネルギー、高効率、環境負荷に配慮されたものが多い。

(下社学)

(カザフスタン)

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