日・イラン投資協定が発効、知的財産保護や紛争処理の条項も

(イラン)

テヘラン発

2017年05月09日

 日本とイランの投資協定が4月26日に発効した。同投資協定は全21条で構成されており、「知的財産保護」条項が入っていることが特徴的だ。また、「紛争処理」条項によって国際仲裁手続きが利用できることになった。イランは、経済制裁解除(2016年11月)以降に日本を含め4ヵ国と投資協定の署名を行っている。

投資ライセンスを取得しなくても投資保護

4月26日に日・イラン投資協定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが発効した。同投資協定はイランへの経済制裁解除直後の2016年2月5日に署名されたもので、その後、両国の国会での承認を得て、発効に至った。日本からイランへの投資は、これまでもイラン国内法である外国投資促進保護法によって保護を受けることができた。しかし、保護を受けるにはイラン政府が承認・発行する投資ライセンスの取得が必要で、取得要件として「イランの雇用機会増大に寄与すること」「国内投資による生産を阻害しないこと」などが求められていた。同投資協定により日本の投資家は、投資ライセンスを取得をせずに投資保護を受けられることとなる。なお、外国投資促進保護法で定められている投資優遇処置を受けるためには、引き続き投資ライセンス取得が必要だ。

日・イラン投資協定は全21条で構成されており、「知的財産保護(第14条)」条項が入っていることが特徴的だ。イランはWTO非加盟国で、WTO協定の一部である知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)にも加盟していないため、何らかの法的措置を講じるためには、イランで知的財産権を有している必要がある。本協定で知的財産保護の枠組みができたことにより、イランでの知的財産保護の進展が期待できる。また「紛争処理(第18条、第19条)」条項によって、紛争が起こった場合には国際仲裁手続きが利用できることとなった。実際に国際仲裁を申し立てることは、手間やコストの面で難しい側面もあるが、知的財産分野のみならず契約違反などで紛争が起きた際には活用できるだろう。

イランの投資協定締結は53番目

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、イランにとって日本は53番目の投資協定締結国(自治区を含む)となる(添付資料参照)。イランの最大の貿易相手国である中国をはじめ、経済制裁解除以降、徐々に存在感を示しつつある韓国、フランス、ドイツといった国とも既に投資協定を締結している。なお経済制裁解除以降、イランはスロバキア、日本、シンガポール、ルクセンブルクと投資協定の署名をしている。

財務省の貿易統計によると、2016年の日本とイランの貿易額は前年比1.8倍の632億円で、両国間のビジネスは拡大している。投資協定の発効が、両国間のさらなるビジネス拡大の契機となることが期待される。

(藤塚理)

(イラン)

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