対象品目が広がる国家規格の強制適用-申請コスト増などに留意が必要-

(インドネシア)

ジャカルタ発

2017年05月10日

 インドネシア国家規格(SNI)の強制適用の対象品目が増加している。国家標準化庁(BSN)では、工業製品を中心に205品目が強制適用の対象としており、近年は食料や生活用品にまで広げる傾向にある。インドネシアに拠点を持たない事業者にとって、製造工場の監査や船積み前検査を伴うSNIは費用と時間の両面で負担が大きいため、注意が必要だ。

強制適用の対象は200品目を超える

インドネシア国家規格(SNI)は、国家標準化に関する政令2000年第102号SNIで、その範囲、目的、制定プロセスなどを規定している。SNIを管理・監督する国家標準化庁(BSN)によると、2017年3月時点で8,787品目のSNIがあるという。SNIは原則として任意規格だが、安全性や衛生、環境保護などの観点から、関係省庁やその他の政府機関が強制適用を課しており、対象品目についてはSNIを取得しない限り国内流通が認められない。BSNによると2017年4月時点で、205品目が強制適用になっている。ジェトロではBSNウェブページの内容を取りまとめ、強制適用となっているSNIのリストを作成し、ウェブサイトで公開している(表参照)。

インドネシア国家規格(SNI)の主な強制適用リスト
分野 規格数 規格対象物
航空 14 空港設備(標識、通信機器)など
工業 74 自動車タイヤ、自動車ガラス、熱延形鋼、肥料、陶製タイルなど
農業 3 粗糖、有機農業システムなど
公共事業 17 ビルなど建設時の指針・手順など
エネルギー鉱物資源 14 家庭・道路用の電気製品の安全性など
その他 4 人工甘味料、その他

(出所)国家標準化庁(BSN)ウェブサイト

近年、SNI強制規格の対象範囲が徐々に拡大している。2005年に空港設備(標識、通信機器)、2006年にビルなど建設時の指針・手順、2012年に鋼板や形鋼、2015年に自動車用のタイヤやガラスが適用となった。さらには、パーム食料油、ビスケット、乳児衣料品などの食品や生活用品にまで対象範囲が拡大している。現地報道によると、工業省は、潤滑油の輸入が増加していることを理由に、2018年に同製品に対してSNIを強制適用する方針だという。

拠点がない事業者には費用と時間の両面で負担大

インドネシアに拠点を持たない事業者にとって、工場監査や船積み前検査を伴うSNI取得申請は費用と時間の両面で負担が大きい。国家認定委員会(KAN)から承認を受けた国営あるいは民間の検査・認証機関による工場監査や製品のサンプル検査などを経る必要があるが、日本国内では対応のできる提携先機関は限られる。また、一度取得したSNIは複数年の有効期間となっているものの、インドネシア向け輸出に当たっては別途、船積みごとに検査を義務付けられている品目もある。経済産業省の不公正貿易報告(2016年)では、2014年に導入された玩具に対するSNI強制規格について、インドネシア国内事業者は生産ロットごとに検査を行えばよいが、輸入玩具は船積みごとに検査を受ける必要があり、貿易上の不公正な措置と指摘している。

なお、SNIではISO認証に準拠するものが複数含まれており、既にISO認証を保有している工場はSNIの審査要件は満たしていることが多いが、相互認証制度はない状況だ。

(山城武伸)

(インドネシア)

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