パリの小売店出店規制が2018年から強化-店舗面積400平方メートル超に事前許可を義務付け-

(フランス)

パリ発

2017年03月14日

 パリ市内の小売店の出店規制が2018年1月から強化され、事前許可が必要な店舗面積が、1,000平方メートルから400平方メートルになる。

<新たな規制は3年間の時限措置>

 2018年1月1日からパリ市内では、店舗面積が400平方メートルを超える小売店とショッピングセンターの出店、拡張、食品中心の小売りへの業務変更、3年以上営業を行っていなかった店舗の再開について、事前許可の取得が義務付けられる。この規制は、3年間の時限措置として2017年3月1に公布された「パリの地位と主要都市の整備に関する法律」に盛り込まれた。政府は、時限措置の継続可否に関するレポートを措置終了の8ヵ月前までに議会に提出する予定。

 

 事前許可の申請は、パリ市長、出店などをする区の区長を含む8人で構成される県商業整備委員会(CDAC)へ提出する。CDACは、立地と都市機能への影響、駐車場、交通〔公共交通機関へのアクセス、二酸化炭素(CO2)排出量が最も経済的となる輸送方法〕、環境への配慮、環境汚染の可能性、商業の活性化、中心市街地の保護、多様性などを考慮し、申請から2ヵ月以内に多数決により決定を下す。

 

<流通業界は無意味と批判的>

 フランスでは1973年、大型店舗の急増に伴い人口4万人までの市町村は1,000平方メートル、人口4万人以上のところは1,500平方メートルを超える店舗の出店に事前許可の取得を義務付ける出店規制が施行された。1996年には中小小売店の振興・保護を目的として、規制を店舗面積300平方メートルと強化したが、2008年の「経済近代化法」で小売流通業者の競争を図り食料品価格を抑えるため、1,000平方メートル超の店舗に規制を緩和していた(2008年7月28日記事参照)。

 

 2008年の規制緩和によりパリ市の許可審査件数は30件台から10件台に半減、規制の対象とならない中小規模の店舗が増加したため、同市は都市計画を効率的に運用できないと判断した。車やオートバイの宅配サービスをする中小規模の店舗も増えており、大気汚染悪化の懸念もある。欧州環境庁の2016年11月23日の発表によると、欧州では毎年50万人近くが大気汚染により死亡しているという。人口密度の高い国際都市パリは、都市としての魅力を保持するとともに住民の生活の質を保証するために、監督権を強化する必要があるとしている。

 

 パリ市は、営業時間、駐車場、配達などについて事前に協議できるとしているが、大手流通業者の団体アリアンス・ド・コメルスのクロード・ブル会長は、地元の議員が出店を規制したいのは分かるが「無意味な措置」だと批判している。

 

(奥山直子)

(フランス)

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