移民局が「専門職ビザ」特急申請の一時停止を発表

(米国)

ニューヨーク発

2017年03月10日

 米国移民局(USCIS)は3月3日、全てのH-1Bビザ申請のうち特急申請サービスの提供を4月3日から一時的に停止すると発表した。今回の措置は、ここ数年の申請件数および特急申請の急増により、処理が追い付かなくなっている状況を緩和するため、H-1Bビザの審査期間の改善を図るもの。米国移民局の発表では、この停止措置は最長6ヵ月続く可能性がある。

<審査期間の改善を図るための措置と説明>

 米国移民局は3月3日、H-1Bビザ申請のうち特急申請(Premium Processing)サービスを4月3日から一時的に停止すると発表した。この措置は最長6ヵ月間続く可能性があるという。

 

 H-1Bビザは「専門職ビザ」と呼ばれ、主に会計士や工学系(IT系)のエンジニアなど、特定分野の高度な専門知識を必要としている職種に限られるビザで、米国移民局の審査期間は平均で6~9ヵ月程度を要する。特急申請は1,225ドルの追加料金を支払うことで、審査期間が15日に短縮される制度だ。

 

 H-1Bビザは近年、年間応募枠の8万5,000人を超す応募が殺到している。そのため抽選で割り当てが決められ、ビザ取得が困難になるケースが頻発し問題となっている。移民局の発表によると、今回の措置は、ここ数年の申請件数および特急申請の急増により、処理が追い付かなくなっている状況を緩和するため、H-1Bビザの審査期間改善を図るものだ。

 

 H-1Bビザは、滞在期限が失効する前に延長申請を提出すれば、移民局の審査が継続中であっても、240日間は滞在および就労を続けることができる。今回の措置により、特にこのステータスの期限である240日に近づいているケースのビザを優先的に処理するという。

 

<延長申請中は運転免許の期限などに注意が必要>

 移民法に詳しい米総合法律事務所RBLパートナーズのボアズ麗奈弁護士は「特急申請を一時停止することによって、長引いている審査期間を短縮する事例は過去にもあった。しかし、今回は過去の例に比べ対象が広く、停止期間も長引く恐れがあるため、その分影響が大きくなる可能性はある」と話す。また、「H-1Bビザの延長申請中は240日以内であれば継続して滞在と就労が可能だが、運転免許の期限が迫っている人は、移民局の許可なしでは免許を更新できない。また審査が完了し、新しいビザを取得するまでは出入国の制限もあるため注意が必要だ」と指摘している。

 

(渡辺謙二郎)

(米国)

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