どれが「最適」かの判断が重要-多種類の入国ビザをめぐる事情(1)-

(インドネシア)

ジャカルタ発

2017年03月24日

 インドネシアの入国ビザには、滞在期間と活動範囲によって多くの種類がある。外国人の入国に当たっては滞在目的に沿った種類の入国ビザを取得することが求められるが、その際、就労が認められるのは就労ビザ(312)のみで、それ以外では就労できないことに留意が必要だ。インドネシアの入国ビザ事情を2回に分けて報告する。

<就労認められるのは「就労ビザ」のみ>

 外国人の入国ビザは下記のとおり。

 

(1)到着ビザ(VOA)

(2)シングル・ビジネスビザA(B211A)

(3)シングル・ビジネスビザB(B211B)

(4)シングル・ビジネスビザC(B211C)

(5)マルチ・ビジネスビザ(D212)

(6)就労ビザ(312)

(7)家族帯同ビザ

 

 インドネシア法務人権大臣規程2016年第24号では、入国ビザの種類とそれぞれで可能な活動範囲などを規定している(表参照)。このうち、ビザ免除による入国は観光、親族訪問、社会活動、芸術・文化活動に加え、講演やセミナー参加、会議出席など9項目ある。しかし、表で示したように、例えばシングル・ビジネスビザAでは観光ができるのに、マルチ・ビジネスビザではできないといった規定となっており、これが混乱の原因となっている。このほか、空港の入国管理の現場で規程どおりに運用されているとは限らず、ビザ免除の場合の活動範囲を観光のみと認識しているケースや言い掛かりをつけるような入国審査官もいるとのことだ。進出日系企業の中には、ビザ免除であるはずの会議出席のための出張者に到着ビザを取得するよう指導しているところもあるそうだ。

 

 また、表の4種類のビザ(免除を含む)で認められる活動範囲は8項目で重複しており、どのビザが最適かを判断する必要がある。例えば、ビジネスでの出張の場合はマルチ・ビジネスビザだと思われがちだが、活動可能な項目は多くない。また、マルチ・ビジネスビザでの滞在日数が最長60日間なのに対し、シングル・ビジネスビザAは延長手続きにより最長180日まで滞在可能なので、連続して長期間滞在する場合は便利だ。

表 主な入国ビザの認められる活動範囲と最長滞在期間

<機械修理や技術指導は就労ビザが必要>

 これら4種類のビザでは現地就労が認められておらず、これらのビザで入国した外国人は工場での技術指導、機械設置、メンテナンスなどの業務には従事できないことになっており、これらの業務をするためには就労ビザの取得が要件となる。

 

 なお、シングル・ビジネスビザAの活動範囲に「緊急時の作業」という項目がある。現地工場で機械が故障した場合、日本から技術者がこのビザを取得し駆け付けられるのではと考えがちだが、認められていない。ここでいう「緊急」とは自然災害などの際の救助や復旧活動を指している。

 

(鎌田慶昭)

(インドネシア)

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