日系企業、オーストラリアや中国への販路開拓目指す

(ニュージーランド)

オークランド発

2017年03月22日

 ジェトロが2016年10~11月に実施した「2016年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」の結果から、通関実務上の問題や電子商取引(EC)の利用実態について、在ニュージーランド日系企業の動向をまとめた。

<輸出先は日本が40.4%と最大>

 進出日系企業の輸出先の内訳は、日本の構成比が40.4%と最大で、オセアニア(オーストラリア、25.8%)、中国(10.6%)が続く。他方、「今後1~3年後の事業/製品の輸出市場として最も重要と考える国・地域」については、オセアニア(オーストラリア、32.1%)、中国(18.9%)、日本(13.2%)の順に高く、オーストラリアや中国市場への輸出販路の開拓を目指す進出日系企業の意向が浮き彫りとなった。

 

<電子商取引の利用が進展>

 貨物の引き取り、通関手続き・事務などに関する設問では、港・空港への貨物到着から貨物引き取りにかかる平均日数のうち、海上貨物については南西アジア諸国と同水準の日数を要しており、東南アジアで最も時間がかかるラオスに比べて4割も多くの時間を要することが分かった。ニュージーランドの輸入においては、検疫などをめぐってさまざまな手続きが必要で、輸入取引上で時間がかかることがしばしば指摘されてきたが、本調査でもそれを裏付けた格好だ。他方、航空貨物については、オーストラリアより短時間で、調査対象国の中でもタイやマレーシアと並んで最短時間のグループに属する。

 

 また、「申告と異なる関税分類の判断を受けたことがあるか」や「特恵関税が税関当局によって否認されたことがあるか」については、他国に比べると割合が低く、貿易手続きの透明性の高さは確保されているようだ。

 

 電子商取引(EC)の活用実績については、29.7%の企業が利用したことがあるとしており、全対象国・地域の平均11.9%を大きく上回っている(図1参照)。また、その利用用途では、越境ECは少ないものの、他のアジア諸国と比較し、当地での販売においての利用が多いことが特徴だ(図2参照)。

図1 電子商取引の活用
図2 電子商取引活用の用途(複数回答可)

 ECを利用するに当たっての課題については、問題点が「特にない」とした回答の割合は55.2%と、調査対象国・地域の中で最も高い水準にあった。ニュージーランドのEC環境は良好といえるが、「不正確な配送時間」「限定的な決済手段」「決済システムの信頼性」の課題については他のアジア諸国よりもむしろ高率で指摘されている。一方、越境ECの場合に特定されるが、「「関税支払い基準が不透明」と指摘した企業はなく、同国の透明性の高さがうかがえる。

 

<TPPへの期待についても質問>

 この実態調査の調査時点では、環太平洋パートナーシップ(TPP)発効を目前に控えていたため、TPPへの期待についても質問をした。その結果、「発効した場合の経営への影響」が「ある」とした企業の割合は18.9%で、調査対象の20ヵ国・地域の中でベトナム(29.2%)、マレーシア(23.3%)に次いで高かった。一方で、「影響なし」(45.9%)はTPP締結国では最も高くなった。

 

 TPP協定が発効した場合の具体的な影響について聞いたところ、「現拠点からの輸出増」「現拠点での生産増・販売増」が高く、「現拠点からの輸出減」「現拠点での生産減」など負の影響を指摘する回答の割合は低かった。進出企業へのヒアリングによると、「関税削減、撤廃による受益を直接には受けないが、取引先がTPPによって受益を受けて事業が拡大するに伴い、自社商品に対する需要も増える期待がある」という声もあった。TPPは世界のGDPの約4割を占める巨大経済圏をカバーし、意欲的な協定だったことから、進出日系企業による期待も高まっていたことがうかがえる。

 

(林道郎)

(ニュージーランド)

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