日本を含む80ヵ国・地域を対象にビザを免除-滞在の上限は5日間、ロシア経由は対象外-

(ベラルーシ)

欧州ロシアCIS課

2017年02月15日

 ベラルーシで2月12日から、日本を含む80ヵ国・地域を対象にした査証(ビザ)を免除する措置が始まった。免除措置は滞在期間の上限を5日間とし、ミンスク国立空港を通じた空路での出入国のみに限る。ただし、ロシアからの同空港を通じた出入国に免除措置は適用されない。ベラルーシ政府は、外国人旅行者の増加を見込んでいる。

<出入国地をミンスク空港に限定>

 ビザ免除措置は2017年1月9日付大統領令第8号「外国人の出入国の査証免除手続きの制定について」によって導入され、2月12日に施行された。同日、ビザ免除が適用された最初の入国者の1人、中国人女性に、ミンスク国立空港でスポーツ観光省幹部から歓迎の花束が贈られた。

 

 ビザ免除の対象となるのは80の国・地域の国民で、日本のほか、EU加盟国、米国、トルコ、中国などが含まれる。免除は5日間を滞在の上限とし、出入国地がミンスク国立空港(ミンスク国際空港とも呼ばれる)である場合とされる。ただし、ロシアからミンスク空港に到着する場合やミンスク空港からロシアに出発する場合、免除措置は適用されない。つまり、日本からであってもモスクワ経由でミンスク空港に飛行機で行く場合は対象外となる。ロシアとベラルーシ間の航空便は国内線扱いで、出入国管理がないことが理由とされている。ビザ免除の対象は一般旅券(パスポート)での入国で、外交・公用旅券は対象外だ。

 

 入国に際しては、(1)出国日から6ヵ月間の有効期限のある一般旅券、(2)滞在1日当たり最低46ベラルーシ・ルーブル(約2,760円、BYR、1BYR=約60円)(注)相当の金融手段(現金やキャッシュカード)の所持、(3)ベラルーシ国内で有効な保険金が最低1万ユーロ相当の医療保険(海外旅行保険)の加入を示す書類、が求められる。

 

 施行日に先立ち、2月10日に東京の在日ベラルーシ大使館でビザ免除措置に関する説明会が開催され、約20人の旅行会社関係者が出席した。説明を行ったイリヤ・プーシキン参事官によると、金融手段の所持については、日本人ならまず確認されることはないだろうということだった。金融手段をキャッシュカードとする場合は、引き落とし口座の残高証明書が必要になる。海外旅行保険は事前に加入していなくても、ミンスク空港で入国審査前に現地保険会社の窓口で加入できるという。

 

 ビザ免除対象となる80ヵ国・地域のうち、中国、ベトナム、ガンビア、ハイチ、ホンジュラス、インド、レバノン、ナミビア、サモアの9ヵ国の国民については、a.EU加盟国またはシェンゲン協定加盟国が発行する数次ビザ、b.パスポートへの同加盟国の入国スタンプ、c.ミンスク空港発の航空券、の提示が求められる。プーシキン参事官は「主にEUに滞在している人を念頭に置いたもの」と説明した。

 

 上限の滞在5日間を超えてしまうと罰金が科される。また、プーシキン参事官は「一定期間ベラルーシとロシアに入国できなくなる恐れもある」と注意を促した。急病など不測の事態でやむを得ず滞在を延長する場合は、現地の警察に届け出て出国用ビザの交付を受ける必要がある。この場合、出国地点はミンスク空港でなくてもよい。

 

<旅行会社から免除期間や対象出入国地に注文も>

 説明会の出席者からは「5日間は短いように感じる」「ポーランドやロシアから陸路で入る場合もあるが、今後ビザ免除の対象となるか」との意見や質問が出た。プーシキン参事官は、今後の対象拡大見込みなどは未定、と答えた。

 

 日本とベラルーシを結ぶ飛行機の直行便はない。説明会に出席したロシアCIS専門の旅行会社によると、飛行機で日本からベラルーシに行く場合の主なルートは、モスクワ経由、北京経由、ワルシャワ経由がある。この中で多く利用されるのはモスクワ経由だが、ビザ免除措置の対象外となる。成田~モスクワ間とモスクワ~ミンスク間では毎日運航便があるが、ロシアの通過ビザとベラルーシの入国ビザの両方を取得しなければならず、2つのビザ取得手続きで通常3週間ほど要する。

 

 ベラルーシ国家統計委員会によると、2015年の旅行会社が手配した同国への旅行者数は27万6,260人だった。スポーツ観光省のミハイル・ポルトノイ次官はビザ免除措置導入で、「旅行客数が何倍にも増えるとは期待していないが、15~20%は増えるのではないか」との見方を示した(国営通信ベルタ2月12日)。2015年の旅行会社手配の日本人旅行者数は256人。説明会に出席した旅行会社によると、主にチェルノブイリ原発事故関連の交流やビジネス目的が多いという。

 

 説明会では、スポーツ観光省の日本の窓口とされる旅行会社オールの担当者が、2017年に日本の旅行会社7社がベラルーシ旅行商品を販売する予定を明らかにした。ベラルーシ周辺のウクライナやモルドバを含む旅行商品になる見込みだ。2016年は1社しかベラルーシの旅行商品を販売していなかったという。

 

(注)法令では「2基本単位」とされている。現時点の1基本単位は23ベラルーシ・ルーブル(2017年1月1日改定)。不定期に改定されるが、2012年以降は年に1度改定されている。

 

(浅元薫哉)

(ベラルーシ)

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