TN州首相が死去、後任にパニールセルバン州財務相
(インド)
チェンナイ発
2016年12月09日
タミル・ナドゥ(TN)州のジャヤラリータ州首相が12月5日深夜、チェンナイ市内の病院で死去した。68歳だった。高熱による脱水症状を起こして9月22日から入院、容体は快方に向かっているとされていたが、12月4日夜、病院側が「心停止を起こし危篤状態にある」と発表、集中治療が続けられていた。これを受け、パニールセルバン州財務相が6日早朝、新首相に就任した。財務相を兼任する。
<社会福祉や産業振興に尽力>
ジャヤラリータ氏は、TN州議会与党の全インド・アンナ・ドラビダ進歩連盟(AIADMK)の党首でありシンボルともいえる存在で、「母」を意味する現地語「アンマ」の愛称で親しまれていた。首相在任中には、社会福祉政策の一環として貧困層・中低所得者層への日用品の無償支給などを行ったほか、TN州の産業振興にも尽力した。2015年9月に開催された投資誘致イベント「グローバル・インベスターズ・ミート」では、総額2兆4,000億ルピー(約4兆800億円、1ルピー=約1.7円)の投資をTN州に呼び込むことに成功し、政治家としての手腕が高く評価されていた。
2016年5月に行われたTN州議会選挙では、現職不利との見方が根強い中、AIADMKが圧勝し、同州で32年ぶりとなる首相続投を決めた。ジャヤラリータ氏はこれを「歴史的勝利」と位置付け、通算4度目となる州首相に就任した。
しかし、9月22日に高熱による脱水症状を起こし、チェンナイ市内のアポロ病院に入院した。一時は集中治療室に入っていたが、その後容体は快方に向かい、12月4日午後には「間もなく退院できるだろう」との報道もあったものの、同日午後9時ごろにアポロ病院が「心停止を起こし危篤状態にある」と発表した。専門医による集中治療が続けられていたが、5日午後11時半ごろ死去したという。
<パニールセルバン州財務相は2度州首相を経験>
ジャヤラリータ氏の死亡を受け、AIADMKはパニールセルバン財務相(65歳)を新首相とすることを決め、6日早朝、州知事の下で宣誓式を行った。同氏は財務相を兼任する。同氏を除く31人の閣僚は全員が留任となり、所管業務の変更もない。
パニールセルバン氏はこれまで2度、ジャヤラリータ氏が汚職事件で有罪判決を受け失職した際、州首相を務めた経験がある。しかし、いずれもジャヤラリータ氏が上訴審で無罪となり政界に復帰するまでの数ヵ月間だった。本格的に州首相の座に就くのは初めてなだけに、その手腕が注目される。
ジャヤラリータ氏の葬儀は6日夕方、チェンナイ市内で行われた。弔問場となったラジャジ・ホールや、埋葬会場となったMGRメモリアル(マリーナ・ビーチ)には数十万人が集まり、周辺の道路は全て通行止めとなった。インド下院第3党のAIADMK党首の死亡とあって、ムカジー大統領、モディ首相、国民会議派(コングレス)のラフル・ガンジー副総裁ら、中央政界の要人も葬儀に訪れた。
<当地日系企業は7日から営業再開>
ジャヤラリータ氏の死去を受け、TN州政府は12月5日に以下の政令を発表した。
(1)12月6日を公休日とすること
(2)12月6日から12日までの7日間を服喪期間とし、同期間中は全ての政府機関に半旗を掲げること
(3)12月6日から8日までの3日間は、全ての教育機関を休日とすること
なお、ジャヤラリータ氏の死去から葬儀終了まで大きな混乱や暴動は起きなかったため、当地日系企業は7日から営業を再開している。ただし、今後の治安情勢は不透明なため、しばらくは注意が必要だ。
(前田雄太)
(インド)
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