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経済安定化計画の下、鉱山開発や発電プロジェクトに重点-モンゴル経済の現状と課題(1)-

(モンゴル)

中国北アジア課

2016年11月14日

 ジェトロと在日モンゴル大使館が10月13日に東京で共催した「モンゴル貿易投資フォーラム」では、エルデネバト首相らが日本との貿易拡大や投資誘致について講演し、経済の現状や今後のビジネスの参考となるさまざまな資料が示された。モンゴル経済をみる上で重要かつ具体的なデータを4回に分けて報告し、近未来のビジネスの可能性を探る。1回目は、「マクロ経済の現状」と「鉱山分野の現状と大規模案件」について。

<経済の多様化で持続可能な成長目指す>

 まず、1013日に東京で開かれたモンゴル貿易投資フォーラムの資料「モンゴル国経済の現状」を基にマクロ経済の現状と課題をみよう。

 

 モンゴルでは8月に新内閣が発足し、99日に国家大会議において2016年補正予算と20172019年の財政見通し(政策文書)が承認された。928日には、経済安定化計画(ESP)の国家大会議提出が閣議決定された。

 

 ESPは、短期的には経済を安定させるため、債務の持続可能な財政政策、国際収支赤字削減のための金融政策、通貨安定政策を実施するというもの。中期的には持続可能な経済成長を達成するため、経済の多様化促進、鉱業以外のセクターの支援、鉱業・インフラプロジェクトの実施を通じた経済成長の促進、ガバナンス・法制度改革を実施するとしている。

 

 2016年のモンゴルの財政赤字はGDP18%に達し、一時的に拡大しているようにみえるのは、新内閣が財政の統一性を確保するために、これまでは国家予算にはなかった項目を組み込むなどしたことも一因としてある。2019年までに財政赤字の比率を段階的に下げ、GDP5%に抑えることを目標としている。財政が一時的に困難な状況に陥っても、中長期的に財政赤字や債務を一定レベルに維持していくことが重要となる。

 

<鉱物分野では約10件の大規模案件を計画>

 モンゴルは資源国であり、鉱山開発は国の将来を左右するプロジェクトだ。大規模なオユトロゴイ鉱山の開発が進められており、第2段階の地下鉱山開発が今後45年かけて実施され、46億ドルが投じられる。こうした鉱業関連で約128億ドルのほか、インフラプロジェクトで約54億ドル、エネルギープロジェクトで約44億ドルの開発案件が計画されている。エネルギー関連では石炭鉱山の近くに900メガワット(MW)以上の大規模石炭火力発電所の建設などが予定されており、モンゴル国内の電力供給のみならず、電力を輸出する計画になっている。

 

 次に、同フォーラムの資料「鉱山大規模案件について」をみてみよう。

 

 鉱物資源分野の法制度は、十分に整備が進んでいる。2014年に策定された鉱物資源国家政策は今後、鉱物資源分野を発展させることを目標とし、民間に立脚した透明性や国際市場での競争力強化を掲げている。さらに産業分野では、工業国家政策、石油分野の国家政策、放射性資源国家政策などが実施されている。核エネルギー法や鉱物資源法、石油法などの法律も整備されている。

 

 鉱物資源分野は2015年のGDP18%、工業生産の63%、輸出の79%を占め、モンゴル経済を牽引する。地質調査の結果、80種類の鉱物資源、1,000以上の鉱床と1万以上の鉱徴の存在が明らかになっている。鉱物資源の埋蔵量が高い精度で把握できており、銅が5,700万トン、石炭が1,750億トンなど豊富な資源を有している。

 

 地質鉱山事業に、政府は特別許可証を出している。モンゴル全体では3,800の特別許可が下りているが、81.8%は国内投資および合弁企業が占める。特別許可証を保有する合弁企業の5.4%を日本との合弁企業が占めている。外資100%企業では中国が半分を占めている。

 

 20162020年において、鉱物分野では約10の大規模案件がある。例えば、オユトロゴイ銅・金地下鉱山は2016年から事業が開始され、年間5,700万トンの精鉱生産能力を整備する予定だ。

 

 重工業分野については、鉱物資源を採掘し、できる限り国内で加工して付加価値の高い製品として輸出する政策に取り組んでいる。モンゴルにとって重要なのは石油製油案件だ。現在、石油製品はほぼ全てを輸入しているが、モンゴルには3億トンの石油埋蔵量があると見込まれている。そのうち4,000万トンは開発可能といわれることから、近い将来に製油所を新設する必要がある。これらの重工業案件は、日本との協力の可能性の大きい分野だ。

 

 産業技術パーク案件では、エルデネト産業技術パーク、ダルハン、バヤンゴビ地域、バガノールに工業地帯を設ける計画がある。

 

 そのほか、銅精鉱工場案件についてはエルデネトとオユトロゴイが既に稼働しており、今後ツァガーンソバルガが稼働すれば、34年の間にモンゴルの銅精鉱生産量は200万トンに達する見通しだ。金は2020年には20トンに増産させる目標があり、金の精製工場も必要になる。モンゴルは蛍石も世界有数で、蛍石の需要が高い日本との協力も考えられる。

 

 地質調査に基づいて地下鉱物を発掘し、消費者に近い場所で精製し、輸出することが重要だ。今後、モンゴルは鉱物資源分野の投資を誘致するため、法的環境を整備することにしており、互恵的関係が成り立てば日本との共同開発を実施したい。鉱物資源製品市場での競争力を向上し、輸出に関しては「1つの窓口」を推進し、高付加価値製品の生産を増強し、品目の多様化を目指す。

 

<銅や蛍石製品の共同事業で日本と協力の可能性も>

 日本との協力の可能性としては、銅やフッ化化合物、蛍石製品を長期に提供するための共同事業に関心を持っている。硫酸を利用した蛍石精鉱加工によるフッ化化合物の生産、電気銅から最終製品の製造、機械設備組み立て、石炭加工による燃焼ガス・液体燃料・合成製品の抽出、レアアース・レアメタルの共同調査、リモートセンシングセンターの創設、重工業案件への日本からの投資などが考えられる。

 

 日本の先進技術と、モンゴルの鉱物資源や原料。互いの長所を合わせた協力を、モンゴル政府は希望している。

 

(黄海嘉)

(モンゴル)

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