改正会社法の全条項が施行-「株式の最低30%をケニア人が保有」が外国企業の支店登記の要件-

(ケニア)

ナイロビ発

2016年07月25日

 2015年9月に成立した新会社法は、一部が施行済みだったが、2016年6月15日付で残りが施行され、全ての条項が効力を有することとなった。同法の施行によって、会社設立手続きの簡素化などが実現するものの、外国企業の新たな支店登記要件として、ケニア人による株式の最低30%保有という規定が加えられた。法曹界や産業界からは同規定の廃止を求める声も上がっており、しばらくは不透明な状況が続く見通しだ。

<会社法を約50年ぶりに改正>

 旧会社法(Companies Act, Chapter 486)は1948年の英国会社法を基に作成され、ケニア独立(196312月)後に制定されている。20159月に制定された「2015年会社法(Companies Act, 2015)」(以下、新会社法)は、1985年、2006年の英国会社法を基に作成されており、約50年ぶりの全面的な改正となった。新会社法は、全42編、1,026条で構成されており、2015116日に一部が施行された。その後、官報(Legal Notice No.109)により、2016615日付で残りが施行され、全ての条項が効力を有することとなった。ケニア政府としては、新会社法の下で、ケニアに最新の法概念を導入するとともに、ケニアの会社法制度に国際競争力を持たせ、ビジネス投資環境の整備を進めたい意向だ。

 

<会社設立手続きを簡素化>

 新会社法では、会社設立手続きが大幅に簡素化されている。私会社(Private Company)の場合、旧会社法では株主2人以上が必要だったが、株主1人での会社設立が可能となった。既存の会社は、株主を1人に減らすことが可能だ。旧会社法下では、会社の事業目的を基本定款(Memorandum of Association)に列挙しなければならず、会社の行為は原則として当該目的の範囲に限定されていたが、新会社法では、会社の定款により明白に規定されない限り、会社の事業目的は無制限となっている。また、払込株式資本が500万ケニア・シリング(約550万円、Ksh1Ksh=約1.1円)未満の私会社については、秘書役の選任義務はない。私会社については、定款に開催を義務付ける規定がない限り、年次株主総会を開催する義務はなくなった。会社設立手続きにおける印紙税は撤廃され、名目資本金にかかわらず会社設立申込費は一律1Kshに変更となった。その他、弁護士や法律事務所に設立文書の作成と会社設立手続きの代行を依頼する必要はなくなった。

 

<産業界は支店登記要件に懸念表明>

 新会社法で問題となっているのが、379752項で規定されている、支店(外国法人の登録事務所)を開設する場合の登記要件だ。同項によると、外国企業がケニアに支店を開設する場合、株式の最低30%をケニア人に保有させなくてはならない。同項については、201511月に産業化・企業開発省のモハメド長官が「政府の政策を意図するものではなく誤り」であるとして、議会での修正審議のため、6ヵ月間の執行停止および同項の修正を約束していた。

 

 産業界は、ケニア人に外国企業の株式の30%を取得させることは非現実的で、外国投資を阻害するとして懸念を表明している。ケニアに進出予定の大手日系メーカーは「支店開設の手続きを保留にするかどうか社内で意見が分かれており、今後の展開を注視していく」と慎重な姿勢を保持する考えだ。

 

(島川博行)

(ケニア)

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