英国のEU単一市場アクセスに厳しい条件-EU首脳の非公式会合後に常任議長が声明-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2016年07月04日

 英国の国民投票(6月23日)以降で初めてとなるEU首脳の非公式会合が、6月29日にブリュッセルで開催され、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長が声明を発表した。英国のEU離脱に向けた交渉は「秩序あるかたちで進めるべきだ」と、「単一市場へのアクセス権限を得るにはヒトの自由移動などの保証が前提」と厳しい条件を繰り返した。次回会合は9月16日にブラチスラバ(スロバキア)で開催の予定だ。

<ヒト・モノ・資本・サービスの自由が前提>

 トゥスク常任議長は629日に「EU首脳による非公式会合」の結果について声明を発表し、「英国のEU離脱交渉は秩序あるかたちで進めなければならず、英国政府が正式に離脱意思を通知するまで、いかなる協議も行わないことを再確認した」と述べた。また、「英国が今後も近しいパートナーであることに期待している」としながらも、あらためて「EU単一市場へのアクセスのためには、(EU域内の)ヒトの自由移動を含む『4つの自由(ヒト・モノ・資本・サービス)』が前提となる」との認識を示した。これは英国の国民投票以降、一貫して繰り返されているEU首脳の見解で、トゥスク常任議長はあらためて「単一市場に『アラカルトメニュー(お好みで注文する料理)』はない」と強調した。

 

 ただ、トゥスク常任議長は「これは英国の国民投票以降で初めての27ヵ国の首脳の意見交換の機会であり、この結果を最終的な結論と考えるのは早計だ」「この協議を続けるため、次回は916日にブラチスラバで会合を予定している」とも述べ、今後の展開への柔軟姿勢もにおわせた。スロバキアは71日から、2016年下半期のEU議長国を務めている。

 

<新EU議長国は英国との離脱協議を「大きな挑戦」>

 欧州議会のスロバキア選出議員は、EU議長国就任に向けて抱負を語った。欧州人民党グループ(EPP)所属のアンナ・ジャボルスカ議員は「われわれのEU議長国期間は英国のEU離脱交渉から始まる。これは前例のない問題で、(EUでの外交経験の浅い)スロバキアにとってだけでなく、EU全体にとって『大きな挑戦』となるだろう。EU加盟国であることが経済関係での相互利益を実現するとともに、通商関係以上の利益を国や市民にもたらすことを明らかにするのは大きな課題だ」とコメントした。

 

 また、欧州保守・改革グループ(ECR)所属のブラニスラフ・シュクリペク議員は「英国のEU離脱はEUに『冷や水』を浴びせる格好となったが、われわれが何か新たなことを学ぶべき歴史的な転換点だ」「英国のEU離脱で本当に傷つくのは英国人ということが明らかになってきた。EU離脱キャンペーン自体は多くの誤解を生み、欺瞞(ぎまん)に満ちている。英国のEU離脱は『道半ば』だが、(EU残留派が多かった)スコットランドや北アイルランドで、英国からの独立の是非を問う住民投票が実施された場合、次の驚きの展開があるかもしれない」と語った。

 

(前田篤穂)

(EU、英国)

ビジネス短信 499cdaf1402e120e