日本の投資環境と魅力を説明-対日投資セミナーをベトナムで初開催-

(ベトナム)

ハノイ発

2016年07月26日

 ジェトロは7月5日、経済産業省、ベトナム計画投資省外国投資庁(FIA)と共催で、ベトナムで初となる対日投資セミナーをハノイ市で開催した。日本の投資環境についての講演に続き、日本企業とビジネス関係のあるベトナム企業の代表者が、日本への進出や対日ビジネスの経験などについて話した。ベトナム経済の発展に伴い、地場IT企業を中心に日本にビジネス拠点を設ける動きも出てきており、セミナーにはベトナム企業関係者ら約200人が参加した。

<日本進出のIT大手が対日ビジネスの具体例を紹介>

 セミナーの基調講演では、ジェトロの前田茂樹理事が、日越の直接投資の概況や対日投資拡大の要因、投資先としての日本の魅力について説明した。

 

 日本市場については、「洗練された巨大な市場」「観光分野でのビジネスチャンス」「ITビジネスでの日本企業との協業」の3つを指摘、とりわけ日本が目指すIT最先端国家への取り組みの中で、情報システムやソフトウエア開発の拠点としてのベトナム活用を強調した。そして、既に日本に進出しているベトナムIT大手のFPTソフトウェアが2018年までに日本語を理解できるシステムエンジニアを1万人育成する計画を発表していることなど、対日ビジネスの具体的な事例を紹介した。

写真 講演するジェトロの前田茂樹理事(ジェトロ撮影)

 FIAのドー・ニャット・ホアン長官のあいさつに続いて、ブー・バン・チュン副長官がベトナムの対外投資の実績について説明した。国別ではラオスが一番多く、日本は68ヵ国・地域中45位にとどまるものの、特に情報技術、ソフトウエア開発など高付加価値分野で投資実績があり、ベトナムの同分野における技術力の向上につながるとした。また、医療サービスや観光、農産品の分野での投資の潜在的な可能性について期待を寄せた。

写真 あいさつするドー・ニャット・ホアンFIA長官(ジェトロ撮影)

<日本語人材育成や意思疎通の重要性を力説>

 セミナー後半ではまず、ベトナムソフトウエア協会(VINASA)のグエン・ドアン・フン副会長兼日越IT協力クラブ(VJC)会長が、ベトナムのIT業界の評価は世界的に向上しており、同分野の売上高も順調に推移していることを紹介した。人材育成の面では、現在300ほどの学校がIT人材を育成し、年間5万~6万人が卒業しているものの、教育の質についてはさらなる改善が必要と述べ、そのために日本の大学と協力し、日本語人材を増やす取り組みを行っていることを説明した。また2015年には、ベトナムの情報通信省と日本の総務省が、人材育成、情報セキュリティー、電子政府における協力を推進する覚書を締結し、ベトナムの大学でIT人材の育成を協力して行うなど、IT産業における日越協力が進んでいることに期待を示した。

 

 対日ビジネスを手掛けるベトナム企業によるプレゼンテーションでは、最初にVPMSのグエン・スワン・フイ社長が講演した。同社は2006年創業で、主に金型製造を行い、日本企業と共同で四輪車の部品を製造している。主要製品・事業は、プラスチック射出成形、アルミ金型、治具取り付けなどで、日系四輪・二輪車メーカーや家電メーカー向けに出荷しているという。日本企業とのビジネスを成功させたカギは、QCD(品質・コスト・納期)と、報告・連絡・相談の「ホウレンソウ」だと述べ、QCDにおいて日本企業が何を求めているのかを深く理解するため、連絡・相談を密に行い、常に情報交換することの重要性について説明した。

 

 続いて、2015年に日本法人を設立したIT企業ティンバン・アウトソーシング(Tinhvan Outsourcing)のグエン・イック・ビン社長が、数年前まで中国やインドが主力だったIT分野のアウトソーシングが、ここ3年でベトナムへのニーズが高まり、多く受注できるようになったことを紹介した。ベトナム企業の問題として、品質基準に関する認識の違いで日本企業の期待に応えられないケースが多いことを挙げ、これらの問題を解決するには、プロ意識を持つことと、コミュニケーションを積極的に取り、深く理解しようとする姿勢を持つことが重要だと述べた。

 

 また日本進出に当たっては、ジェトロ・ハノイ事務所やジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)を利用したことで、税務や法務、不動産会社の紹介などさまざまな相談ができ、非常に有用だったと語った。

 

 質疑応答では、ジェトロに相談すればどういった対応や支援をしてもらえるのか、日本での事務所開設にどのくらい時間がかかるのか、といった具体的な質問が多くあり、ベトナム企業の対日ビジネスに対する関心の高さがうかがえた。その後行われたレセプションでは、埼玉県、愛知県、京都市、大阪外国企業誘致センター、神戸市、福岡市がブースを設け、投資先としてのそれぞれの魅力を紹介した。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

(荒井拓也)

(ベトナム)

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