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英国のEU離脱、フランス経済への影響は限定的との見方-中長期的には欧州事業体制を見直す日系企業も-

(フランス、英国)

パリ発

2016年07月04日

 英国のEU離脱に伴うフランス経済への影響は限定的との見方が大勢だ。国内景気が内需に支えられていることや、対英輸出がGDP比2%未満と比較的小さいことがある。在フランス日系企業にも今のところ大きな影響はみられないものの、ジェトロのヒアリングの対して、「関税障壁などでサプライチェーンが阻害されれば、欧州域内拠点の配置や分業体制などを見直す可能性がある」「英国とEUがどのような経済関係を結ぶのかを見極めながら、欧州総体として新たな体制を検討、再構築していく」などの声が聞かれた。

2016年のGDP成長率見通しに変更なし>

 フランス中央銀行のフランソワ・ビルロワドガロー総裁は625日、ラジオ番組(フランス・アンテール)のインタビューで、「フランス経済がここ数四半期のうちに減速する兆候はない。フランス国立統計経済研究所(INSEE)は624日、第1四半期の実質GDP成長率を5月に発表した速報値と同じ前期比0.6%と確定した。民間企業の設備投資が牽引役だ。中銀は6月初めに、2016年通年のGDP成長率を1.4%と見通したが、英国がEU離脱を選択した今日でも、この数値に変更はない」「英国のEU離脱は欧州経済にマイナスの影響を与えるものの、その度合いは英国経済への影響に比べると限定されたものになるだろう」と話した。

 

 当地の民間エコノミストの間では、英国のEU離脱によるフランスGDPの押し下げ効果を2019年までに0.20.4ポイント程度とする見方が広がっている。フランスの景気は内需に牽引されているため、「景気回復の腰を折るような影響はない」とみる。「対英輸出がフランスのGDPに占める割合は2%に満たず、ベルギーやオランダに比べて小さい」ことも要因に挙げられている。

 

 ただ中長期的には、英国のEU離脱により「国投資家が欧州やフランスから資本を引き揚げる」ことや、「新たなルールができるまで長い時間がかかり、そのために生まれる不透明性はフランスおよび欧州経済の足を引っ張る」可能性もありそうだ。英国とEUの交渉は「3年から10年はかかる」との声も聞かれる。

 

<中長期的な影響を見極める日系企業>

 「レゼコー」紙は624日、「フランス企業は英国EU離脱の影響を最小化」と題する記事の中で、英国事業を展開する広告会社ピュブリシス、ケータリングサービスのソデクソ、自動車メーカーのPSAプジョー・シトロエンなど大企業経営者のコメントを紹介した。「2008年の金融危機(による景気後退)の打撃よりも小さい」「英国事業はサプライチェーンから従業員まで全て現地化している」ことなどから、「大きな影響はない」とする声が多かった。

 

 英国の原子力発電所建設プロジェクトに参加しているフランス電力(EDF)のジャン=ベルナール・レビ会長は624日、「英国のEU離脱はフランス電力の戦略に影響を与えない」との見解を示し、英国通貨ポンドの下落にも既に対応済みとした。「EU離脱支持派、特にアンドレア・リードソン英エネルギー・気候変動省閣外大臣はこれまでに(英国のEU離脱後も)脱炭素社会に向けた政策やヒンクリーポイント原発建設計画を維持する姿勢を示してきた」ため、「英国子会社の戦略も変更しない」と語った。

 

 ジェトロ・パリ事務所が在フランス日系企業に対して62829日に行ったヒアリング調査によると、短期的には「為替変動で業績に影響が出る」可能性は否定できないものの、ビジネスに大きな影響はないとの見方が大勢だった。ただ、中長期的には「英国とEUがどのような経済関係を結ぶのかを見極めながら、欧州総体として新たな体制を検討、再構築していく」「今後、関税障壁などサプライチェーンが阻害される可能性もある。欧州域内拠点の配置や分業体制などを見直すかもしれない」「英国経済への影響が長引けば、人材配置を含む対英投資計画に変更が生じることもある」などの声が聞かれた。

 

<経営者団体は対英制裁につながる措置の回避求める>

 フランス最大の経営者団体であるフランス企業運動(MEDEF)のピエール・ガターズ会長は624日、英国のEU離脱派が多数となった結果について「今回の結果は帰着点ではなく、欧州に不可欠な新たな飛躍のための出発点となるべきだ」とし、「EU離脱に向けた英国とEUの交渉では、相互の信頼の下、制裁につながる措置の導入は避けるべきだ」との見解を明らかにした。

 

 また、ガターズ会長は626日付の週刊誌「ジュルナル・デュ・ディマンシュ(JDD)」に、ドイツ産業連盟(GDI)のウルリッヒ・グリロ会長、ドイツ経営者団体連盟(BDA)のインゴ・クラマー会長と共同声明を発表した。「欧州は結び付きを新たにして信頼を回復し、攻勢に出なければならない。統合に向け独仏のエンジンはこれまで以上に不可欠であり、力強さを取り戻さなければならない」とした上で、ドイツとフランスの首脳に対し「外交、セキュリティー、テロ対策で統一した立場を取ること」「欧州統一市場(モノ、サービス、資本、人的移動の自由)とユーロ圏統合に関わる欧州プロジェクトを強化すること」「英国との新たな協力関係について具体的な内容と道筋を明確に定めること」などを求めた。

 

(山崎あき)

(フランス、英国)

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