従価税の導入が柱、酒税法の改正めぐり国会審議進む-国産・外国産の税の不公平感是正や生産者保護が狙い-

(コロンビア)

ボゴタ発

2016年06月27日

 コロンビア国会では、酒税に新たに従価税を追加することなどを柱とする、酒税法の見直し審議が進められている。政府は、国産と外国産酒類の税の不公平感を是正することで国内の生産者を保護し、酒税を重要財源とする地方政府の税収の安定確保を図るとしているが、小売価格の値上げは免れそうになく、非合法の酒類の流通が広がるといった懸念も出ている。

<現行法ではアルコール度数のみで課税>

 現行の酒税法では、アルコール度数35度以下の飲料に関しては1度数当たり306ペソ(約11円、1ペソ=約0.036円)、35度超の製品に対しては502ペソの酒税(従量税)が課されている。廉価品であってもアルコール度数が高ければ税負担が重くなることから、特に当地でよく飲まれるサトウキビ由来の蒸留酒アグアルディエンテの生産業者からは「値段の高いワインやシャンパンなどに比べると相対的に税負担が大きい」と不満の声が上がっていた。マウリシオ・カルデナス大蔵・公債相は「外国産の高価な酒の税率は(従価税に換算すると)3%程度だが、コロンビアの安価な地酒はボトル1本当たり30%の税金を払っている」と述べ、酒税一本化へかじを切った。

 

 現在、小売価格6万ペソの外国産ウイスキーに対する酒税は280ペソと酒税法どおりに課税されており、OECD加盟国の平均42,000ペソを下回っている(「エル・パイス」紙612日)。財務省は、税額が相対的に低い外国産高級酒などの市場拡大が酒税の税収減につながっているとしており、酒税見直しによる税収増は悲願ともいえる。

 

<従価税の併用で地方自治体の税収増見込む>

 新酒税法案では、アルコール度数にかかわらず1度当たり220ペソの従量税に加え、税抜き価格の25%に相当する従価税が新たに課税される。なお、5%の付加価値税(IVA)はこれまでと変わらない。このうち従量税と従価税は地方税なので、今回の見直しにより、地方自治体の税収は年間2,500億ペソ(約20%)増えると見込まれ、各自治体は教育、健康、スポーツなどの拡充を図るとしている。

 

 一方、新酒税法が施行された場合、酒類の小売価格の値上げは必至だ。ワインは2.4倍、ウイスキーは2倍になると予測されており、アグアルディエンテとラム酒のロンはそれぞれ50%、40%の価格上昇になるという(「ラ・レプブリカ」紙614日)。また、増税の影響から非合法(密輸など)の酒類の流通が広がる恐れもある。コロンビアでは現在、販売されている酒類の4本に1本は非合法とされ、特に首都ボゴタでは3本に1本といわれる。酒税法の改正により、酒類の密輸・密売に加え、粗悪な密造酒が横行するなど犯罪組織の資金源が増えることが懸念される。

 

<政府は地場業者の利益確保を強調>

 政府が酒類を従量税と従価税の複合課税とする法改正案を決めたのは、酒類が生活必需品ではなく、嗜好(しこう)品であり、相当の財政収入が確保できるとみたからだ。マリア・ラクトゥール商工観光相は「酒類業界の税負担の公平性を確保するため」とし、アルコール度数が高い地酒業者の利益になることを強調した。一方、コロンビア毒性学病院のホルヘ・マリン院長は「健康に害を及ぼす可能性のある酒類の消費を抑制することは国際的な傾向だ」と語り、小売価格上昇による酒類の消費減退に期待を寄せている。

 

(安心院茉里)

(コロンビア)

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