越境EC新制度の通関証明書提出を猶予

(中国)

北京発

2016年06月01日

 中国政府が4月8日に越境電子商取引(EC)に関する新制度を導入して間もなく2ヵ月になろうとしているが、現場での混乱状況をみて、上海市、重慶市など10の試験都市で「通関証明書(通関単)」の提出を、2017年5月11日まで猶予することなどを決めた。財政部が政策解説をウェブサイトに掲載した。

10試験都市以外でも海外直送モデルなら猶予>

 財政部は525日、越境EC新制度(2016年4月1記事参照)に関する措置についての政策解説をウェブサイトに掲載した。天津市、上海市、浙江省杭州市、同寧波市、河南省鄭州市、広東省広州市、同深セン市、重慶市、福建省福州市、同平潭県の10の試験都市で、越境EC小売輸入商品リストのうち検疫該当商品で提出が必要とされた「通関証明書(通関単)」について、2017511日まで約1年間は提出を求めないこととした。

 

 また、化粧品、幼児用粉ミルク、医療機械、特殊食品(健康食品、特殊医学用途成分配合食品など)で初回輸入時に必要としていた輸入許可証、登録、届け出について、同じく猶予するとした。

 

 10の試験都市以外でも、保税区倉庫を通さない海外直送モデルの取引では、前述の商品初回輸入時の輸入許可証、登録、届け出について、同じく猶予するとした。

 

2017511日以降は対応が必要>

 48日に越境EC新制度が施行されてから、「通関証明書」が提示できず、通関ができなくなり、混乱を来すケースが発生した。南方網(521日)は、越境EC企業への供給ルートは複雑で分散しており、その多くは直接生産メーカーが提供している製品でないため、「通関証明書」取得に必要な原産地証明など一連の資質証明が提供できず、大部分の商品が通関できず、在庫も補充ができていないと報じていた。

 

 国家質量監督検験検疫総局が515日にウェブサイトに掲載した説明では、越境EC小売輸入商品リストのうち「通関証明書」が必要なのは約36%にすぎないとしていた。しかし、南方網の報道によると、多くの越境ECに携わる人の声として、「(越境ECの)商店における実際の経営商品は、大部分がこの36%に入る。以前の初歩的な統計によると、貨物の値段で計算するなら、9割を超える商品に『通関証明書』が必要だ」としており、影響は大きかったようだ。

 

 また、前述の商品について、初回輸入時に必要な手続きは、結果的に正規輸入と変わらなくなっているとの声が上がっていた。例えば、越境ECで販売する化粧品についても、化粧品衛生監督管理条例の規定に従い、初回輸入の際は必ず国家食品薬品監督管理総局(CFDA)の審査および許可または登記の届け出が必要となることなどだ。複雑な手続きを経なければならないことに加え、手続きに時間がかかる点も指摘された。新しく化粧品を輸入する場合は、CFDAでの届け出を終えるのに1年以内ではほぼ不可能との声もあった(新華網57日)。

 

 越境EC新制度について今回、実際の運用で早急な対応が難しいと判明した点につき、過渡期を設けることを決めた。しかし、2017511日からは対応が求められることになる。

 

(宗金建志)

(中国)

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