2015年の知財民事一審の新規受理件数は10万件超え

(中国)

北京発

2016年06月03日

 2015年の知的財産権に関わる民事一審の新規受理件数は10万件を超え、過去最多となった。同件数の地域別分布は、北京市、上海市、江蘇省、浙江省、広東省が多く、全体の7割を占めており、特に江蘇省の増加率が38.7%と最も顕著だった。渉外(外国との案件)および香港、マカオ、台湾関係の行政事件の既済件数は前年比2.2倍の4,928件だった。知的財産権に関わる事件の裁判審理の難易度は、引き続き高まっている。

<知的財産権に関する民事一審事件は過去最多>

 最高人民法院は4月、「中国法院知的財産権司法保護状況(2015年)」を発表した。それによると、2015年の中国における知的財産権に関わる新規受理件数において、民事一審事件は前年比14.5%増の109,386件、行政一審事件は0.8%減の9,839件、刑事一審事件は1.0%減の1975件だった(表1参照)。

表1 全国地方法院における知的財産権に関わる民事・行政・刑事の一審事件新規受理件数

 行政一審事件と刑事一審事件はほぼ横ばいだったが、民事一審事件は大幅に増加し過去最多となっている。また、その件数については、同年の日本における全国地裁一審の知的財産権関係民事事件の新規受理件数が533件であることを踏まえると、中国において知的財産権に関わる訴訟がいかに多いかが分かる。

 

<民事一審事件は類別全てで増加>

 知的財産権に関する民事一審事件の新規受理件数のうち、専利(特許、実用新案、意匠)事件は前年比20.3%増の11,607件、商標事件は13.1%増の24,168件、著作権事件は12.1%増の6 6,690件、技術契約事件は38.2%増の1,480件、不正競争事件は53.4%増の2,181件(独占禁止関係事件156件を含む)、その他の知的財産権事件は22.4%増の3,093件だった(図参照)。民事一審事件においては、類別全ての件数が増加している。

全国地方法院における知的財産権民事一審事件新規受理件数(類別)

<北京・上海市と江蘇・浙江・広東省が全体の7割>

 また、知的財産権に関する民事一審事件の新規受理件数の地域別分布は、北京市、上海市、江蘇省、浙江省、広東省が多く、全体の7割を占めている。これら件数のうち広東省は横ばいだったが、北京市、上海市、江蘇省、浙江省は大きく増加し、特に江蘇省の増加率が38.7%と最も顕著だった。

 

 渉外および香港、マカオ、台湾関係の行政事件の既済件数は2015年に4,928件で、知的財産権に関わる行政一審事件の既済件数の45.1%を占め、件数ベースでは前年比2.2倍だった。内訳は、渉外事件(香港、マカオ、台湾関係を除く)は4,348件と全体の88.2%を占め、香港に関わる事件は295件、マカオに関わる事件は8件、台湾に関わる事件は277件となった(表2参照)。

表2 知的財産権関連行政渉外事件第一審の既済件数

<引き続き高い裁判審理の難易度>

 発表によると、引き続き知的財産権事件の裁判審理の難易度が高いことを指摘し、先端技術に関わる専利行政事件、専利権侵害紛争事件、新技術の共同開発、技術成果の応用に関わる技術契約紛争事件、市場競争秩序の維持に関わる独占禁止・不正競争事件などがその要因としている。また、インターネットに関わる知的財産権侵害紛争が次々と生じ、知的財産権裁判に新たな課題を生み出している。

 

 2014年に設立された北京、上海、広州知識産権法院については、前年に引き続き今回も取り上げられ、規則・制度の構築、各種改革措置の実施について報告している。2015年末時点でのこれら3つの知識産権法院の受理した知的財産権に関わる民事および行政事件は15,772件だった。

 

 最高人民法院は、司法改革の推進、裁判体制・仕組みの改善、監督指導の強化、公正で効率な司法の保障、司法保護の強化、司法保護環境の改善、厳重な管理の徹底、裁判チームの育成の強化などに取り組んでいる。また、イノベーションについても大きく掲げており、今後も知的財産権に関する司法面での保護が着実に進められていくものとみられる。

 

(赤澤陽平)

(中国)

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