市場の安定と円滑な離脱措置などを要求-主要経済団体が次々に声明発表-

(英国)

ロンドン発

2016年06月25日

 英国のEU残留・離脱を問う国民投票の結果について、英国の主要経済団体が声明を発表した。政府とイングランド銀行がともに、市場を安定化させることや離脱によるビジネス環境への影響の内容を明確にすることを求めている。

<英政府・中銀には最優先で市場の安定化求める>

 英国産業連盟(CBI)は、今回の投票結果を歴史的な転換点と表現した。今回の結果に対しては多くの企業が懸念を抱いており、どのような影響が及ぶかを整理するには時間を要する一方、時間が与えられれば転換期を乗り越えられるとした。その上で、産業界の適応力に自信を持つべきとする認識を示した。

 

 今回の結果を踏まえた優先対策には市場の安定化を挙げ、政府に対してイングランド銀行とともに経済の信頼性・安定性を下支えするよう求めている。さらに、このような環境を乗り切るために政府には強く、冷静なリーダーシップが必要とした。

 

 英国商工会議所(BCC)は、CBIと同様に市場安定化に向けた対策を速やかに打つ必要があるとの認識を示したのに加え、今後の政治に見通しを付けることも重要、とするコメントを寄せた。デービッド・キャメロン首相に対しては、スケジュールなどを含めEU離脱に向けたステップを明確に提示するよう求めた。将来のビジネスの見通しが不透明となる過渡期が長引けば、投資や雇用などあらゆる面に影響が及ぶことから、この間の経済支援策を詳細に提示することも求めている。

 

 英国経営者協会(IoD)は、離脱は会員の大半が望んでいなかったものと前置きした上で、このような選択をした以上、政府は可能な限り円滑な離脱措置を取ることが必要だとした。また、離脱措置は迅速なものであるべきで、数週間や数ヵ月といえども産業界は神経質になる、と付け加えた。IoDは、EU加盟国市場へのアクセスに加え、現在英国に滞在しているEU市民が英国内にとどまることを保証するよう政府に対し求めている。能力ある移民従業員の喪失につながることへの懸念を表明した格好だ。

 

<産業界への影響の中身の解明が重要>

 英国小規模企業連盟(FSB)は、他の経済団体同様に市場の安定を求めるとともに、今回の結果がEU単一市場へのアクセス、ヒト・モノの移動の自由などの面で、産業界にいかなる影響があるのかについての解明が必要との認識を示した。さらに、EUが締結している自由貿易協定(FTA)を利用している小規模事業者へ予想される影響の内容を明確化することも必要とコメントした。

 

(佐藤央樹)

(英国)

ビジネス短信 54f5e0cf4ac8638a