フランス人の6割強が英国のEU残留を支持

(フランス、英国)

パリ発

2016年06月20日

 フランス人の6割強が英国のEU残留を支持していることが、世論調査で分かった。ただ、英国の国民投票の行方とその経済的影響への関心は、金融関係者以外は高くないようだが、英国のEU離脱派が勝利すれば、フランスのEU離脱・ユーロ脱退の是非を問う国民投票の実施を公約に掲げる極右政党「国民戦線(FN)」の勢いが増す、との見方が大勢だ。オランド大統領は7月にも、ユーロ圏の統合強化に向けた「ユーロ圏政府」設立について具体的なロードマップを発表するものとみられる。

EU離脱派勝利なら極右政党FNに勢いか>

 英国のEU離脱リスクを懸念し、パリ株式市場のCAC40指数は613日に1.85%、14日に2.29%それぞれ下落した。ただし、英国の国民投票の行方とその経済的影響への関心は今のところ、金融関係者に限られているといった印象だ。国際法律事務所ピンセント・メーソンズが実施した調査(41115日に英国・ドイツ・フランスの企業幹部1,042社に対して実施)によると、フランス企業の3社に2社は英国のEU離脱の影響について検討したことがない、という。特に製造業や建設業でこの傾向が強かった一方、金融関連では5割以上の企業が「英国のEU離脱を社内で検討した、または対応済み」と回答した(経済紙「レゼコー」67日)。

 

 フランスの世論調査会社Elabeの調査結果(531日~61日に実施)によると、回答したフランス人の62%が英国のEU残留を支持している。英国の国民投票よりも613日にパリ郊外で起こった「イラクとシャームのイスラム国(ISIS)」戦闘員による警官殺害テロ事件、フランス国鉄などで続く労働法の改正法案に対する抗議スト、セーヌ川流域の洪水被害、サッカー欧州選手権フランス大会の競技結果への関心の方が高いように見受けられる。

 

 ただ、英国のEU離脱派が勝利すれば、フランスのEU離脱・ユーロ脱退の是非を問う国民投票の実施を公約に掲げるFNの勢いが増す、と懸念する向きは多い。先の世論調査では、フランスのEU離脱を支持するフランス人は全体の3割程度にとどまっているが、FN支持者の7割はフランスのEU離脱を支持する、との結果が出ている。

 

<「ユーロ圏政府」設立の動きも>

 オランド大統領は英国のEU残留を支持する発言を繰り返す一方、「英国がEUに残留するにしても、離脱するにしても、欧州が前進し、ユーロ圏を活性化するための行動を起こす」と明言している。714日の革命記念日に行われる大統領のテレビインタビューで、オランド大統領はユーロ圏の統合強化を目指した「ユーロ圏政府」設立の具体的なロードマップを明らかにするものとみられている。

 

 「レゼコー」紙(615日)は、「英国のEU離脱は、なぜ欧州連邦支持者を復活させるのか」と題した論説を掲載。「英国の国民投票はユーロ圏の統合強化を促す原動力になる」とし、2017年のオランダ、フランス、ドイツでの総選挙後に、ユーロ圏が財政健全化の目標を達成することができれば、欧州は(解体ではなく)機構改革に向け動き出すことができる、との見方を示した。

 

(山崎あき)

(フランス、英国)

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