英国民投票、EU離脱を選択

(英国)

ロンドン発

2016年06月24日

 英国のEU残留か、離脱かを問う国民投票が6月23日に英国全土で実施された。得票率は離脱支持が51.9%、残留支持が48.1%となり、英国民はEU離脱を選択した。

<イングランドとウェールズで離脱支持が多数に>

 英国選挙委員会は623日の午後10時に国民投票を締め切り、全国で夜を徹して開票作業が行われた。全体の開票結果は24日午前720分(日本時間24日午後320分)に正式発表され、離脱支持が51.9%(1,741742票)、残留支持が48.1%(1,6141,241票)となり、英国民はEU離脱を選択した。

 

 投票日に豪雨に見舞われ、浸水などの被害が出た地域もあり、投票率の低下が心配されたが、最終的には72.2%と1992年以降に英国全土で実施された選挙の中では最も高い投票率となった。地域別では、イングランドが離脱53.4%、残留46.6%、スコットランドが離脱38.0%、残留62.0%、ウェールズが離脱52.5%、残留47.5%、北アイルランドが離脱44.3%、残留55.7%、という結果となった。スコットランドと北アイルランドは事前予想のとおり、残留支持が大きくリードする結果となったが、人口規模の大きいイングランドとウェールズでは離脱支持が上回った。イングランドは、ロンドン近郊を除くほぼ全ての地域で離脱支持が残留支持を上回る結果となった。ストラスクライド大学のジョン・カーティス教授はこの結果について、「社会的・文化的な格差によるもの」と分析し、特に社会的に保守的とされ、移民流入に深い懸念を抱くイングランド北部地域で離脱支持が大きく票を伸ばしたことが主な要因、とした。

表 国民投票結果

<投票直前までシーソーゲーム、世論調査も外れる>

 EU残留を訴える労働党のジョー・コックス議員が616日に殺害される事件が発生した後、急速に残留支持派が盛り返したものの、621日に行われた討論会では離脱支持派が勢いを盛り返すなど、離脱と残留の支持模様は最後までシーソーゲームの展開となった。

 

 残留、離脱それぞれの陣営が主張する論点は、幅広い分野に及んだが、投票を間近に控え、残留支持派は経済問題、離脱支持派は移民問題に議論の焦点をほぼ絞った。投票前日の622日には、「タイムズ」紙に1,285社のビジネスリーダーらが残留を支持するレターを投稿するなど、経済面でEUを離脱した場合に発生する悪影響を訴えた。一方で、投票日当日の23日に国民統計局(ONS)が、移民の純流入数は過去最大の335,600人となり英国の総人口が増加した、と発表したこともあり、国民の移民流入増大に対する懸念が増していた。一種の出口調査ともいえる、投票直後にユーガブ(YouGov)が行った世論調査では、残留支持が52%、離脱支持が48%だったが、最終結果は逆になった。

 

(佐藤丈治)

(英国)

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