市場アクセスや人材確保めぐり戦略見直しも-EU離脱で主要企業がコメント発表-

(英国)

ロンドン発

2016年06月25日

 英国の国民投票でEU離脱が選択されたことを受け、英国で事業を営む主要企業がコメントを発表した。EU離脱による直接的な影響について言及を避ける企業が多いが、一部の企業は事業戦略の見直しを示唆している。

<政府に慎重な対応求める企業も>

 EU離脱を訴えてきた飲食大手JDウェザースプーンの創業者ティム・マーティン氏は、英国内でパブを営む自社事業への影響についての明言は避けつつも、今回の結果を歓迎する意向を表明した。その上で、「EUとの交渉の時間は十分にあることから、拙速に結論を出さないことが肝要」と政府に慎重な対応を求めた。

 

 EU残留支持派では、格安航空会社(LCC)のイージー・ジェットがコメントを発表した。今回の投票結果により戦略や事業の安定性が大きく影響を受けることはないとしながらも、「EU単一航空市場の在り方についての英国政府と欧州委員会との議論を注視したい」とし、引き続き単一市場へのアクセスを求める書簡を英政府と欧州委に送付したことを明らかにしている。また、鉄道、旅行などのコングロマリットで、同じく残留を訴えていたヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏は、EU加盟以来40年にわたりもたらされてきた恩恵が危機にさらされる、と遺憾の意を表明した。それでも、離脱が多数を占めたことを尊重し、国論を二分した英国の現状を克服することを考えるべきと訴えた。

 

<備えに自信みせる金融機関も>

 ジャガー・ランドローバーやタタ・スチールなどを傘下に収め、英国の製造業界において大きな存在感を誇るタタ・グループは「これまで戦略や事業運営を継続的に見直してきており、この姿勢はこれからも変わらない。特に、市場へのアクセスと優秀な人材の確保は、戦略などを立案する上で重要な要素」とし、投票結果を受けた環境変化を踏まえ、事業戦略・運営を見直す可能性があることを示唆した。

 

 このほか、ロンドンに本拠を置く大手国際金融グループのバークレイズが、短期的には金融市場に影響するものの、「収益基盤となる地域の分散や商品の多様化を進めるなど、十分な備えを講じている」と、事業運営に自信を示した。また、エネルギー大手のSSEが、「環境性に優れ、安定かつ安価なエネルギーの供給には、英国とEUのエネルギー市場の調和が重要になる」との考え方を示し、引き続き双方の市場が一体的に運用されることへの期待を述べた。

 

(佐藤央樹)

(英国)

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