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在英ポーランド人への影響を懸念-英のEU離脱問題、発言力低下の可能性も-

(ポーランド、英国)

ワルシャワ発

2016年06月28日

 英国で6月23日に行われたEU離脱をめぐる国民投票は、ポーランドにとって望ましくない結果となった。首脳陣は結果を受け、英国の主権を尊重するとしつつも、「喜ばしい日ではない」(ベアタ・シドウォ首相)、「悲しい知らせだ」(アンジェイ・ドゥダ大統領)と述べた。とりわけ、英国に多数在住するポーランド人への影響が懸念されている。EU内でのポーランドの発言力が低下する可能性もある。

<関税上がれば大打撃>

 ポーランドにとって英国はドイツに次ぐ輸出相手国。2015年の対英輸出額は1209,200万ユーロ、輸入額は471,600万ユーロと、737,600万ユーロの貿易黒字だ。主な輸出品目は、機械・電気機器、自動車(HS2桁ベース)で、テレビ、コンピュータサーバーや完成車などを輸出している。EU・英国間の関税がどのような仕組みとなるのか現状では不明だが、テレビや自動車などの関税が引き上げられたりすれば、ポーランドは大きな打撃を受けることになる。

 

 今回の結果の原因の1つとなったとみられる移民問題だが、移民で最も多いのはポーランド人だ。英国国民統計局(ONS)によると、2014年の人口統計では、1年以上英国に滞在しているポーランド国籍保有者は853,000人と2位のインド(365,000人)を大きく引き離す。比較的貧しい東部ポーランドからの移住者が特に多い。在英ポーランド人が英国に居住しない子供のための社会保障を享受していることは、2国間の国際問題となり、2月の欧州理事会で合意したEU改革案で、EU域内からの移民への社会保障給付の制限を認めることにつながった(2016年2月24事参照)。

 

 実際には、EU市民であれば、満5年の居住で永住権を申請できるため、満5年以上居住するポーランド人には大きな問題は生じないとみられる。他方、満5年の居住要件を満たさないポーランド人は、移民法の改正の方向次第で、英国を出国せざるを得ない状況に追い込まれる恐れがあり、ポーランド国際問題研究所(PISM)によると、その数は12万~40万人に上る可能性がある。

 

 また、国外で働くポーランド人からの本国送金は、ポーランド経済にとっていまだ重要だ。ポーランド国立銀行(NBP)によると、2013年の国外からポーランドへの送金額は41億ユーロに上る。うち22%を英国からの送金が占め、ドイツに次いで大きい。

 

 シドウォ首相は624日、国民投票の結果を受け、「ポーランド政府にとって最も重要なのは、英国でのポーランド人の運命だ。われわれは彼らが獲得した権利を守る必要がある」と述べた。

 

<現政権とEUとの対立激化の可能性>

 英国の決定は、現政権とEUとの対立姿勢を勢いづかせる可能性もある。法と正義(PiS)が担うシドウォ政権は、憲法裁判所の独立性問題などをめぐってEUと議論を続けているが(2016年6月16事参照)、欧州委員会の意見に対しては内政干渉と反発している。「EUからの離脱が選択肢として検討されたことはなく、今後も俎上(そじょう)に載せることはない」〔シマンスキ外務副大臣(EU担当)の59日「ポリティカ・インサイト」紙主催の講演会での発言〕ものの、英国国民投票の結果を受け、現政権はEUとの対立姿勢を先鋭化させる恐れがある。投票結果を受け、PiSのヤロスワフ・カチンスキ党首は624日、「新たな欧州条約が必要だ」と述べ、全会一致による決定の対象を拡大することを提唱した。ドゥダ大統領は同日、「なぜ英国がこのような決定を下したのか真剣に問う必要がある。EUが加盟国にあまりに多くを課したからではないのか」と述べた。とはいえ、カチンスキ党首は「ポーランドの居場所はEUにある」「われわれはほとんどのポーランド人がそう考えるように、EUにいたいと考えている」として、ポーランドのEU離脱の国民投票の可能性をはっきりと否定しており、同国がEU離脱を検討する可能性は今のところない。

 

 EU内でユーロ圏に属さない英国という盟友を失うことで、ポーランドの発言力が弱まる可能性も懸念されている。ポーランドと英国は、対ロシア制裁の継続など多くの場面で協調してきた。ビトルド・バシュチコフスキ外相は623日、「もし英国がEUを離脱することになれば、(EUを)ユーロ圏が支配することになる。それはポーランドにとって悪いシナリオだ」と述べた。カチンスキ党首は、ドイツのフランク・バルター・シュタインマイヤー外相が24日にベネルクス3国とフランス、イタリア外相による会議を行う意向を示したことに対し、「つまりポーランドの参加なしに会議は行われるということだ」と不満を示した。

 

(牧野直史)

(ポーランド、英国)

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