上海市、2016年度の社会保険負担額は減少せず

(中国)

上海発

2016年05月11日

 上海市の2016年度(2016年4月~2017年3月)社会保険納付基準が発表された。企業の保険料率は前年度より1.1~2.8ポイント低下したものの、納付基準額算出の基数となる上海市の平均賃金が9.0%上昇し、企業の実質の負担額は減少しなかった。社会保険の負担軽減策は全国で実施されているが、平均賃金から算出される納付基準額が賃金上昇により上海市と同様に引き上げられており、保険料率の引き下げによる効果は限定的だ。

<企業の保険料率は低下、基準額はアップ>

 上海市人力資源・労働保障局は411日、2016年度の社会保険料(養老、医療、失業、生育、労災)納付基準額と料率を公表した(表参照)。納付基準額の下限額と上限額は、それぞれ上海市の前年の従業員平均賃金の6割と3倍に相当する額が設定されている。2015年の平均賃金は月額で5,939元(約10963円、1元=約17円)だったため、2016年度の下限額と上限額は3,563元、17,817元となる。平均賃金の上昇に伴い、納付基準額は前年比9.0%増え、2014年度の7.3%、2015年度の8.2%から伸び率が上昇している。

表 上海市の社会保険負担一覧表(2016年度)

 一方、企業が負担する社会保険料率の調整も行われた。据え置く生育保険を除いて、養老、医療、失業の企業保険料率は11日にさかのぼって、それぞれ0.51ポイント低下の20.0%、10.0%、1.0%に引き下げられた。労災保険については、企業の保険料率はこれまで一律0.5%だったが、2015101日から業種に応じて0.21.9%の8ランクに分けられた。ただ、調整直後の保険料負担の大幅増が考慮され経過期間も設けられたが、201641日から本格的に実施することになった。ちなみに、代表的な業種の保険料率は、金融やソフト・情報サービスが0.2%、商業・ホテル・飲食が0.4%、農林水産・機械製造・物流が0.71.1%、化学・鉄鋼・採掘が1.31.9%となっている。

 

 この結果、企業が負担する社会保険料率の合計値は、2015年度より1.12.8ポイント低下の32.233.9%となった。加入者の社会保険負担額は、納付基準額に保険料率を掛けて算出されるため、20164月時点の企業最低負担額は月額1,147元で、20154月時点の1,145元を上回った。

 

<社会保険の負担軽減を全国で実施>

 413日に開かれた国務院常務会議は、社会保険と住宅積立金の企業負担を、2015年に行われた失業、労災、生育保険料率の引き下げに続いて、さらに軽減することを決定した。51日から2年間で、企業の養老保険料率が20%を上回る地域は20.0%へ、失業保険の企業と個人の合計料率を現行の2%から11.5%へ、住宅積立金の合計料率が12%を超える地域は12%へ、それぞれ引き下げることなどを地方政府に求めている。各地方が実施すれば、企業負担の軽減額は全国で1,000億元余りに達する、と試算されている。

 

 景気の下押し圧力が続く中、中国は一連の社会保険の負担軽減策を通じて、企業経営活動の活性化を目指している。ただ上海市のように、納付基準額の算定ベースとなる平均賃金上昇率が大きければ、保険料率の低下がもたらす人件費軽減効果は限定的なものとなる。

 

(劉元森)

(中国)

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