韓国ハンコックタイヤを独禁法違反と認定-自動車業界の独占禁止ガイドラインを公布-

(中国、韓国)

上海発

2016年05月09日

 韓国タイヤメーカーのハンコックタイヤは、流通業者の再販売価格を拘束することで独占禁止法違反と認定され、上海市物価局から217万5,200元(約3,480万円、1元=約16円)の罰金が科された。自動車の普及に伴う交通・運輸に関する苦情が多発しており、国家発展改革委員会は消費者の保護や違法行為の事前予防策として、独占禁止ガイドラインを公布している。

<自動車業界の摘発は7件目>

 上海市物価局は412日、韓国ハンコックタイヤの上海販売会社に対し、「反壟断法(独占禁止法)」違反で課徴金2175,200元を科したと発表した。自動車業界をめぐる摘発は、20148月の日系部品メーカー12社以来、全国で7件目。このうち上海市物価局の執行は2件目となる。

 

 上海市物価局の発表によると、ハンコックタイヤは2012年および2013年、上海市内の流通業者とバス、トラック、乗用車用タイヤの最低販売価格を拘束する契約を結び、一部の業者から保証金5万元を徴収した。価格拘束が独占禁止法14条に違反したと認定したが、ハンコックタイヤが調査前に一部違法行為の停止、また把握できない根拠の提出など調査に積極的に協力したことから、課徴金は前年度売上高21,752万元の1%にとどまった。ちなみに、上海市物価局は独占禁止法執行機関である国家発展改革委員会の出先機関で、ハンコックタイヤに対する調査は201572日から始められた。

 

 ハンコックタイヤは、フォルクスワーゲン(VW)、アウディ、フォード、ゼネラルモーターズ(GM)、ホンダなどの自動車メーカーに納入している世界7位のタイヤメーカーだ。同社は1996年に中国に進出してから、重慶市や浙江省嘉興市、江蘇省淮安市に工場を次々と立ち上げるなど、シェア首位を争うまでに急成長している。

 

<交通・運輸に関する苦情は全体の35%>

 国家発展改革委員会は20151月、消費者の商品やサービスの価格に対する問い合わせや不満、告訴などを一括して処理する苦情センターを立ち上げた。1年間で寄せられた苦情は約10万件に上るが、交通・運輸関連が全体の35%を占め最多となった(表参照)。自動車の急速な普及に伴い、業界の不正などが多発し消費者の不満を招いていると指摘されている。

表 消費者から寄せられた苦情の件数(2015年)

 国家発展改革委員会は323日、自動車業界における独占禁止法の運用ガイドライン草案を公布した。独占禁止法に定められた条項を、業界の実情に当てはめて具体的に規定した内容となっている。セットメーカー、部品メーカー、販売業者はもちろん、アフターサービス、中古車、輸入車、OEM(相手先ブランドによる生産)なども規制の対象に含まれている。産業別の独占禁止ガイドラインは自動車業界が最初だが、運用指針を明確にしたことにより、独占行為の事前予防や消費者権益の保護などが期待されている。

 

(劉元森)

(中国、韓国)

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