乗用車の関税削減スケジュールを前倒し-ペルーとの経済補完協定を深化・拡大へ-

(ブラジル、ペルー)

サンパウロ発、米州課

2016年05月31日

 ブラジルとペルーの間で経済交流を深めることを目的として4月29日に締結された経済補完協定は、ブラジルからの自動車などの輸出に追い風となりそうだ。本協定は3本の柱からなる。(1)サービス貿易や投資、政府調達に関すること、(2)貿易投資円滑化のための委員会設置、そして(3)自動車などの関税削減スケジュール前倒しだ。ブラジルは2015年半ば以降、経済交流を深化させるための既存協定の改定に積極的に取り組んでおり、今回もそうした活動の一環とみられる。

<新たにサービス貿易や公共調達の項目も>

 ブラジルとペルーの間では、南米南部共同市場(メルコスール)諸国とペルーとの間に経済補完協定(ACE58号が2005年に発効し、ブラジル側においては201211日から全品目の関税が無税となっており、ペルー側においても96%の品目が無税となっている。今回の合意は、同補完協定の枠組みにおいて、ブラジルとペルー間の貿易投資交流深化のための新たな施策を盛り込むとともに、現時点でペルー側で有税品目となっている乗用車やピックアップトラックに関して、関税削減スケジュールを早めるものとなっている。

 

 まず、この経済補完協定の深化のための新たなポイントとして、サービス貿易、投資、公共調達、仲裁が加えられた。

 

 今回の交渉においては、政府調達に関する項目が初めて盛り込まれるなど、従来ブラジルが他国と締結してきた協定と比較し、取り扱い分野の幅が広いものとなる。今後はペルーにおける財・サービスに関する政府入札の際、ブラジル企業は自動的に入札参加の権利を得ることができる。同様に、ブラジルにおける政府入札の際に、ペルー企業が参加することが認められる。ペルーではこれまで、ブラジル企業が同国の入札に参加するに当たり、応札者が応札上限額の5%以上をペルーの金融機関に預託(デポジット)する必要があったが、本協定の締結により、この要件がなくなる。

 

 サービス分野では、2015年に大筋合意に達した環太平洋パートナーシップ(TPP)や太平洋同盟で適用されているルールと同等のルールが適用される。TPPでは原則全てのサービスを自由化の対象としており、規則の緩和や撤廃が進むことが想定されている。ブラジルは、IT通信、観光サービス、交通、エンジニアリング、建築およびエンターテインメントなどの分野でペルーへの進出を図りたい考えだ。投資分野では、紛争の予防や仲裁機関の設置が盛り込まれている。

 

<ペルー向け自動車輸出の増加に期待>

 もう1つの柱は、貿易円滑化のための委員会の設置で、これにより双方から貿易投資拡大に向けた提案が行われることになる。

 

 さらに、ブラジルにおける自動車関連企業に影響を与えそうなポイントとして、前述のACE58号における付属書の改定により、一部の品目についてペルーにおけるブラジル産品の輸入税の譲許スケジュールの前倒しが行われることがある。具体的な対象品目は乗用車で、最近の対ペルー輸出実績は表のとおりだ。従来の協定では、201911日から関税がゼロになる予定だったが、今回の交渉により、協定発効と同時にペルー側における当該品目の関税率2.1%がゼロになる。

表 ブラジルの対ペルー自動車関連輸出

 ペルーの自動車市場では、既にペルーと自由貿易協定(FTA)を締結している韓国、中国、タイ、日本で生産された製品が市場の68.1%を占めている。2015年のブラジル産自動車の販売台数は8,325台(シェア4.8%)にとどまっており、ブラジルには今回の合意でペルー向け輸出を増やしたい狙いがある。

 

(辻本希世、竹下幸治郎)

(ブラジル、ペルー)

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