上海市、法定最低賃金を8.4%引き上げ

(中国)

上海発

2016年04月12日

 上海市の法定最低賃金は、4月1日から月額2,190元(約3万7,230円、1元=約17円)に引き上げられ、中国最高の水準となったが、伸び率は8.4%と、2009年以来の1桁台だった。賃上げガイドラインの基準値も9.0%と1桁台にとどまった。経済減速が強まる中、賃金の上昇ペースは緩やかになっている。

<中国では最高水準も伸び率は1桁台に鈍化>

 上海市人力資源・社会保障局は331日、法定最低賃金や賃上げガイドライン、失業給付金、見習生の食事補助金、労災保険給付金などの社会保障基準を41日から調整すると発表した。

 

 全日制就業労働者(正社員)の法定最低賃金は従来の月額2,020元から170元増の2,190元となり、広東省深セン市の2,030元を上回って全国最高となった(表参照)。最低賃金の調整は2010年から7年連続、23回目で、最低賃金制度を導入した1993年(210元)と比べて10倍強となった。

表 各地の法定最低賃金基準(月額)

 同一勤務先に1日当たり4時間、または1週間で累計24時間を超えない非全日制就業労働者(パート)の法定最低時給も、従来の18元から19元に引き上げられた。

 

 最低賃金制度は全国31省・自治区・直轄市で実施され、2年ごとの調整が義務付けられている。ただ、全国平均の引き上げ幅は2011年の22.0%から、2013年の17.0%、2015年の14.0%へと直近5年間で低下している。上海市でも今回は8.4%にとどまり、2010年から6年間続いていた2桁台の伸び率は鈍化した。

 

<賃上げガイドラインも低下>

 2016年度の賃上げガイドラインは基準値9%、上限14%、下限4%となった。労使の賃金交渉を行う際の目安となる賃上げガイドラインは、上海市の経済成長率や消費者物価指数、賃金水準などに基づいて定められている。ただ、法定最低賃金とは異なり、法的拘束力はない。上海市人力資源・社会保障局によると、健全な経営で売り上げを伸ばしている企業は基準値を参考に実際の賃上げ率を決めればよいが、前年度の従業員平均賃金が市平均の60%以下の企業なら上限値を参考とし、市平均の2倍以上なら基準値以下が妥当とされる。また、厳しい経営状況にある赤字企業の実質賃上げ率は、下限より低く設定することができる。

 

 2016年度の賃上げガイドラインは産業構造調整の影響などから経済減速が長引く可能性が高まる中、法定最低賃金や賃上げガイドラインの上げ幅を緩やかにする動きがみられた。前年度に比べて、横ばいとなった下限を除き、基準値は1ポイント、上限値は2ポイントそれぞれ引き下げられた。基準値も2010年から続く2桁台の伸び率が6年で終わり、法定最低賃金とほぼ同様な動きとなった。

 

(劉元森)

(中国)

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