10ヵ所のSEZ発足、民間投資の拡大を狙う

(バングラデシュ)

ダッカ発

2016年04月01日

 バングラデシュ経済特区庁(BEZA)は10ヵ所の経済特区(SEZ)を発足させ、オープニングセレモニーを2月28日に開催した。政府は民間投資の拡大が経済成長のカギとしており、民間企業を巻き込んでSEZ建設を急いでいる。

<今後15年でSEZ100ヵ所を建設し、1,000万人分の雇用創出へ>

 バングラデシュ政府は2021年までの中期的な成長目標(ビジョン2021)で、実質GDPの年間成長率を8%台に加速させ、中所得国入りを目指す。そのためには製造業を主体とした民間投資の拡大が不可欠だが、国内にある8ヵ所の輸出加工区(EPZ)にはほとんど空きがなく、追加投資を呼び込みにくい状況にある。またEPZは原則として輸出向け製品の製造を目的としており、約16,000万人の旺盛な国内需要を取り込みにくいという難点もある。

 

 そこで政府はEPZを追加建設するのではなく、輸出製品を製造する機能を持ちつつ、同時に内需も視野に入れることのできるSEZの建設計画を策定した。首相府直轄のBEZAがこの計画を担当している。今後15年で100ヵ所のSEZ建設、1,000万人の雇用創出、輸出額の年間310億ドルから400億ドルへの拡大など、政府のビジョン2021に向けた取り組みが期待されている。

 

 バングラデシュ投資庁(BOI)によると、20132014年に1,432件の投資申請案件があったにもかかわらず、その大部分が実現されていない。世界経済フォーラムが発行する「グローバル競争力報告書20152016版」はバングラデシュでビジネスをする上での主要な問題点としてインフラの未整備を挙げており、BEZASEZ開発による産業インフラ整備を主要課題に掲げている。SEZの開発および管理運営は民間企業と政府とが官民連携(PPP)で行うものと、民間企業が独自に行うものがあり、外資と地場を問わず民間企業の活用が注目されている。

 

<電力不足を改善し環境にも配慮>

 228日に行われた10ヵ所のSEZのオープニングセレモニーでは、ハシナ首相、アムー工業相、カマル計画相、アザド首相府筆頭次官らが出席し、各国の大使館、外資を含む現地企業などが参加した。ハシナ首相は演説の中で、SEZには雇用創出や地方活性が期待されているとし、開発に向けてはどのような障壁も取り除く、と述べた。投資阻害要因の1つである慢性的な電力不足については、現時点で14,000メガワット(MW)の発電量を、2021年までに24,000MW2041年までに6MWにするとした。一方、開発による環境問題に配慮することや産業クラスターの形成についてもビジョンを示した。

 

 100ヵ所のSEZのうち59ヵ所は場所を選定済みで、そのうち10ヵ所は開発の承認を得ている(表1参照)。工業団地の入居者だけでなく開発者や管理運営企業にも多くの恩典が設けられており、開発者の選定も急がれている(表2参照)。

(古賀大幹)

(バングラデシュ)

ビジネス短信 7e4649ccf4694f4b