ガソリンとディーゼル燃料の輸入自由化を4月に前倒し実施

(メキシコ)

メキシコ発

2016年03月09日

 エネルギー省は、2017年1月に予定されていたガソリン、ディーゼル燃料の輸入自由化を、2016年4月に前倒し実施する。2018年のガソリンスタンドなど小売りの完全自由化に向け、十分な準備期間を置くことで民間の投資、参入を喚起する。

<小売りの完全自由化に備えた環境整備>

 エネルギー省は223日付官報で、「20164月以降、適用規定を順守するガソリン、ディーゼル燃料の輸入に関心のある者に対し、エネルギー省が許可を与えることについての周知」を発表した。もともと、一連のエネルギー改革法の1つ「炭化水素法」(2014811日公布)で20171月以降の輸入自由化が定められていたが、市場環境次第ではそれより前に開始することも規定されていた。

 

 またエネルギー省は、連邦経済競争委員会(CFCE)に対し、2016年のガソリン、ディーゼル燃料の輸入自由化が経済の自由競争に与える効果について意見を求めていた。ポイントは以下のとおり。

 

○競争力のある石油製品の輸入を自由化することにより、消費者に質の高い、安価な燃料が提供可能になるか。

○メキシコの価格構造からして、より良い条件でのガソリン、ディーゼル燃料の調達が流通業者やガソリンスタンドのマージンを生み、それが必要なインフラ投資へのインセンティブとなり得るか。

○新たな価格構造の下で、市場参入者は輸送、保管、配送のコストを最適化し、消費者により良い価格で提供できるようになるか。

○メキシコは他国に比べ、1人当たりのガソリンスタンド数が少ない。カバー率、サービスを保証するため、投資を加速させる必要があるか。

 

 これに対しCFCEは返答で、次のような競争効果があると指摘した。

 

a.供給チェーンに沿って新たな参入を容易にする。

b.ガソリン、ディーゼル燃料の小売業の許可を得た者にとって、供給業者の選択肢が早い段階で増える。

c.輸送、倉庫、配送関連のインフラを加速させる。

d.「上限価格制」(注)の下で市場参入者が価格を下げるインセンティブとなる。

e.さまざまなビジネスモデルを通じ、卸売業者、小売業者を増やし、消費者の便益向上に資する。

 

 エネルギー省はこれらを考慮した上で、20171月より前に輸入自由化を認めることについて、次のように結論付けたとしている。

 

A.現行の供給モデルにおける規制を廃止することで、自由競争が促される。

B.特に国境地帯、内貨地点などロジスティクスのコストが平均以下のところで、上限価格を下回る価格で消費者に提供できる条件が整う。

C.輸送、保管のインフラ投資が促され、エネルギー安全保障に資する。

D.燃料の効率的供給の選択肢が増え、供給網の強化につながる。

E.2018年の完全自由化に向けた準備条件をより整えることができる。

F.ガソリンスタンド数の増加につながる。

 

<石油公社の独占を段階的に開放へ>

 これまで石油公社(PEMEX)の独占分野だったガソリンとディーゼル燃料の流通は、20131220日公布の憲法改正と2014811日に公布された一連のエネルギー改革関連法により、段階的な開放が定められた(表参照)。価格については、2014年中は補助金により市場価格よりも低く抑えている統制価格を徐々に上昇させ、2015年以降はインフレや国際価格の変動などに伴う調整のみで実質的な引き上げは行わないとしていた。2016年以降は上限価格制が用いられ、前年に比べ価格がやや下がっている。2018年以降は価格が完全自由化する。一方、ガソリンスタンドの経営は20161月から自由化されている(PEMEXのフランチャイズ形式での民間の参入はこれまでもあったが、現在はPEMEXのフランチャイズである必要はない)。

<メジャーはガソリン供給事業に関心>

 メキシコガソリンスタンド事業者協会(AMEGAS)のパブロ・ゴンサレス・コルドバ会長は「既にエクソンモービル、シェブロン、テキサコ、バレロ、プーマエナジー、トラフィグラなどからの提案を聞いた」と話す。一方、メキシコ石油小売り機構(ONEXPO)のホセ・アンヘル・ガルシア・エリソンド会長は、「メジャーは今のところガソリンスタンドを構えるよりも、既存の事業者に対するガソリン供給事業に関心がある」としている(「エル・フィナンシエロ」紙223日)。業界関係者も、まずはPEMEX以外の企業がどのようにして輸送タンカーやパイプライン、保管庫などのインフラを整えるのか懸念があると話しており、今回の措置がガソリン、ディーゼル燃料の流通自由化を促進していくか注目される。

 

(注)大蔵公債省令(20151224日付)により、2016年以降は大蔵公債省が毎月一定の価格帯(2016年は13.1613.98ペソ)でガソリン、ディーゼル燃料の上限販売価格を決める。3月は13.16ペソ(92オクタン価以下のレギュラーの場合)。

 

(中島伸浩)

(メキシコ)

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