日本産食品、輸入時の放射線検査を停止

(インド)

ニューデリー発

2016年03月22日

 インド食品安全基準局(FSSAI)は、全ての日本産食品が対象になっていた放射線検査を停止した。日本から輸入された食品は全量、放射線検査を受けなければならなかったが、今回の規制解除により、そうした輸入手続きが簡素化される。

<これまで汚染サンプルは一切見つからず>

 インド食品安全基準局(FSSAI)は、2011311日の東京電力福島第1原発事故を受けて、同15日以降、日本からインド向けに輸出された全ての食品(水産物、果物、野菜、肉類などの生鮮食品を含む)に対して放射線検査を課していたが、2016226日付でこの措置を停止するとした。これまでは、日本から届いた製品の主要輸入地であるニューデリー、ムンバイ、チェンナイの3都市において、指定検査機関による放射線検査が実施されていた。また、FSSAIの食品検査の専門家の配置や税関職員に対して、日本産食品の監視を徹底する通達が出されるなどの措置が取られていた。

 

 36日付の「メール・トゥデー」紙(電子版)によると、FSSAIのパワン・クマール・アグラワルCEOは「当該検査は日本食品の輸入を足止めしていた。過去5年間、日本産食品の輸入に対して厳格な検査体制を実施してきたが、放射性物質に汚染されたサンプルは一切見つからなかった。このため、輸入された日本産食品を対象とした放射線検査はもはや必要ないと判断し、全量検査を停止した」とコメントしている。

 

<専門家からは時期尚早の声も>

 米国、ドイツ、ロシアなどが日本産食品の輸入に対して引き続き規制を設けている中、「メール・トゥデー」紙は、2012年に米国・カリフォルニア沖のマグロから放射性物質が見つかった事例などを取り上げながら、専門家の声として「5年という短い期間では、日本からの輸入食品が本当に放射能の影響を受けておらず、この先も安全性が保たれるかどうか、判断することは難しい」という放射線腫瘍医のコメントも紹介している。

 

<多くの障壁残るインドへの食品輸出>

 農林水産省の資料によると、日本からインドに向けた農林水産物・食品の輸出額は、2014年に約9億円程度。主な輸出品目は真珠や播種(はしゅ)用の種、化粧品用の原料で、放射線検査の対象となっていた生鮮食品はほとんど輸入されていない。

 

 デリーの日本食品小売り関係者は「日本からの輸入食品については、英文の放射線検査証明書をそろえて通関しているが、放射線が原因で輸入が止められた経験はない。輸入に当たって苦慮しているのは放射線検査よりむしろ、商品ラベルの記載に関する規制などだ」と話す。日本からの国別食品輸出額をみると、インド向けは世界33位で食品輸出がまだ本格化していない。今回の規制撤廃で煩雑な手続きが幾分解消されたものの、インドの食品輸入には引き続き障壁が多く、本格的な輸出拡大にはまだ課題が残されている。

 

(梅木壮一)

(インド)

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