非保税貨物の搬入・保存を実現-上海の税関特殊監督区で税務改革措置の実施を発表-

(中国)

上海発

2016年01月28日

 国家税務総局は1月21日、上海市の科学技術イノベーション促進政策を支持するため、上海市で10ヵ条の税務改革措置を実施すると発表した。10ヵ条のうち、税関特殊監督区に非保税貨物の増値税徴収制度を導入し、非保税貨物の搬入・保存を実現する税務改革措置が特に注目を集めている。企業からは、税関特殊監督区を拠点とすることで、保税貨物・非保税貨物をまとめて、運輸・保存、対外貿易、国内生産・販売を管理できる、と期待されている。

<税務改革措置は10ヵ条>

 上海市政府は121日、記者会見を開き、「国家税務総局が上海科学技術イノベーションセンターの建設を支持する若干の措置」を発表し、10ヵ条の税務改革措置を実施する計画を明らかにした。概要は以下のとおり。

 

1)「12366上海(国際)納税服務センター」を立ち上げ、海外進出企業と外資投資企業に対し、企業運営関連税目の納税者サービス、税制関連のコンサルティングサービス、納税の注意喚起サービスなどを提供する。

 

2)「内外貿易税収管理一体化」という新制度を立ち上げる。同制度により、条件を満たす物流、加工貿易企業は税関特殊監督区(注1)で増値税一般納税人として登記し、増値税専用領収書を購入し、非保税貨物の搬入・保存を実現することができる。税務部門や税関などの関連部門は共同で非保税貨物の搬入・保存を監督する。

 

3)「減税・免税リスト制」という新制度を構築し、小型・零細企業の優遇税目リストや固定資産加速減価償却関連の優遇税目リストなどを作成する。条件に合致する納税企業は、税務部門に申告すれば、自動的に各リスト内税目の減税・免税優遇政策が適用され、減税・免税の際に審査申請・登録・資料送付などの手続きが不要となる。

 

4)「即徴即退」の手続きを、月1度から四半期に1度とする。政府はソフトウエア製品の輸出を促進するために、増値税を徴収する際にすぐ還付する「即徴即退」という税務優遇措置を実施している。対象企業は月に1回「即徴即退」の手続きを行わなければならないが、同措置により、納税信用ランクA級の企業は、3ヵ月分の増値税領収書をまとめて申請し、四半期に1回手続きを行うことが認められる。

 

5)「Rビザ」(注2)を持つ外国人に対する免税手当申請の免除。「Rビザ」を持つ外国人は個人所得税を納税する際、免税手当について事前に税務部門に申告しなければならないが、同措置により、当事者は自分で免税金額を計算し、直接免税金額を控除した個人所得税を納付することが可能になる。

 

6)分割払いの個人所得税目について、自主的に5年以内の納税計画を決めることができる。

 

7)オンライン納税システム、スマートフォン向けの電子納税システムなどを完備する。

 

8)電子領収書の応用範囲を拡大する。

 

9)イノベーションモデル区と中国(上海)自由貿易試験区で、増値税還付手続きのペーパーレス化を実現する。

 

10)ほかの地域の税務部門との連動制を強め、長江デルタ内11地域の税務部門との情報共有を実現する。

 

<対外貿易と国内生産販売の同時展開が可能に>

 上海国家税務局・地方税務局の過剣飛局長は記者会見で、10ヵ条の税務改革措置のうち、「内外貿易税収管理一体化」が最も価値のある措置で、現在の税制にとって最も革新的な改革措置でもあり、上海市が同措置の唯一のテスト実施地域だと述べた。

 

 「内外貿易税収管理一体化」により、企業は税関特殊監督区を拠点とすれば、対外貿易と国内生産販売の業務を同時に展開でき、保税貨物と非保税貨物をまとめて運輸・保存して物流コストを削減できることが期待されている。

 

 上海市共産党委員会は市内の科学技術イノベーションと起業を促進するために、2015525日、「世界的に影響力のある科学技術イノベーションセンターの建設加速に関する意見」を議決している(2015年6月1日記事参照)

 

(注1)保税区、保税加工区や自由貿易試験区などの保税地域を指す。海外への貨物搬出入は通関手続きがなく、国内・区外地域への貨物搬出入は通関手続きが必要だ。

(注2)国が必要とする外国人高度人材、専門分野人材に対して発行するビザのこと。

 

(文涛)

(中国)

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