日台租税協定を締結、二重課税解消へ

(日本、台湾)

中国北アジア課

2015年12月04日

 公益財団法人交流協会と台湾の亜東関係協会は11月25~26日に東京で「第40回日台貿易経済会議」を開催した。会議終了後、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取り決め(日台租税協定)」を締結した。今後、日台双方の承認を経て発効する見込み。

<貿易や投資の一層の進展に重要>

 1126日の会議終了後、交流協会の大橋光夫会長と亜東関係協会の嘉進興会長が日台租税協定に署名した。日本と台湾は1990年に国際運輸業のみの租税協定を締結したが、それから25年を経て包括的な租税協定の締結に至った。

 

 2014年の日台双方の貿易額は6159,000万ドル。日本は台湾の貿易相手先3位、台湾は日本の貿易相手先の4位と、密接な貿易関係を築いている。また、20159月までの日本の対台投資額は1858,000万ドルで対台投資先3位、台湾の対日投資額も375,000万ドルと、日台租税協定の締結による二重課税の解消は、貿易や投資のさらなる進展にとって重要だ(注1)。

 

 同協定は、日本と台湾双方の個人および企業が得る各種所得において、所得発生地(源泉地)で課税される所得税の減税・免税措置を適用し、二重課税を解消することで税負担を軽減する。今後、日台双方の関係機関が協定発効に向けて必要な手続きを行い、双方で協定発効が承認された後、双方は書面で通知する予定。通知の受領日から発効となる予定であるが、台湾の財政部は、日本側の承認手続きが2015年中に完了すれば、早くて2016年から発効されるとの見方をしている。

 

<減税・免税措置で投資意欲を促進>

 同協定は、個人および企業を含む日本と台湾の居住者に対して適用される(表参照)。また、適用される主な税金は、日本側は所得税、法人税、復興特別所得税、地方法人税、住民税、台湾側は営業事業所得税、個人総合所得税、所得基本税、およびこれらの税金に課される付加税も含まれる。営業利益については、例えば台湾に恒久的施設(PE、注2)を設けていない日本企業の場合、台湾で法人税17%が課されていたが、同協定発効後は台湾では課税されず、日本の法人税25.5%のみ適用され、二重課税が解消される。減税・免税措置については、日本または台湾で得た配当金や利子、ロイヤルティーに対する税率の上限が10%に引き下げられた。また、租税に関する情報交換を行う仕組みを創設するとともに、関連企業の移転価格税制における双方の二重課税問題の解決を可能にする相互協議手続きの枠組みも創設された。

 

 ほかにも、出張者の免税適用期間が延長された。従来、日本の企業の社員が台湾に90日以上出張した場合は台湾側からも課税されていたが、今後は183日未満の出張であれば課税されないことも明記された。

 

 台湾の財政部は、同協定による減税・免税優遇措置や移転価格税制の調整などの措置を通して、投資所得の税負担軽減による双方の投資意欲の向上や、技術協力による企業競争力の増強および就業機会の創出により、双方の経済成長が促進されると指摘する。

<台湾のTPP参加や日台EPA交渉の前進を期待>

 同協定は台湾で29番目の租税協定となり、韓国よりも先に日本との締結に至った。台湾財政部の張盛和部長は、環太平洋パートナーシップ(TPP)参加国である日本との租税協定発効は、台湾のTPP参加を後押しすると指摘する(「中時電子報」1127日)。また、経済部の●(登におおざと)振中部長は「日台双方は、2011年に『日台投資協定』、2013年に『日台電子商取引取り決め』を締結、そして今回の租税協定が締結に至り、日台の経済や貿易をめぐる協定は積み木のように進められている。租税協定と経済連携協定(EPA)は最も動かしにくい積み木とされていたが、租税協定の締結により、今後日台のEPA交渉が前進するのではないか」との見方を示している(「聨合晩報」1127日)。

 

 なお、1126日の会議終了後、「日台競争法了解覚書」および「日台防災実務協力覚書」についても署名された。

 

(注11126日に台湾財政部が発表した日台租税協定の関連資料による。

(注2)日台租税協定では、事業を行う一定の場所であり、企業がその事業の全部または一部を行うものを指している。詳しくは同協定の「第5条恒久的施設」を参照。

 

(根師梓)

(日本、台湾)

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