自由港制度をウラジオストク以外にも拡大へ

(ロシア)

モスクワ事務所

2015年12月16日

 プーチン大統領は9月4日の東方経済フォーラムでの講演と、12月3日に行われた年次教書演説の中で、沿海地方のウラジオストク周辺地域を対象とした自由港制度の範囲を他の極東連邦管区の自治体と主要港にも拡大させると述べた。大統領の指示に基づき、極東発展省が「極東自由港」法案を起草した。それによると、自由港が沿海地方以外の4つの連邦構成体にも拡大する見込みだ。

<アジア太平洋諸国との貿易発展など狙い>

 プーチン大統領の演説を受け、極東発展省が連邦法案「極東自由港について」を起草し、内容が公表された。

 

 同法案によると、a.既に制定されているウラジオストク自由港制度を極東連邦管区の領域に拡大、b.アジア太平洋地域諸国との国際貿易の発展、c.極東自由港領域における社会経済発展の加速と極東地域の住民の生活水準の向上、を目的としている。法案で挙げられた極東自由港の対象領域は、4つの連邦構成体にある自治体と港湾で、総面積1058,000平方キロ、総人口は48400人に上る。

 

 4連邦構成体の中で、対象となる自治体と港湾は次のとおり。

 

a.カムチャツカ地方:ペトロパブロフスク・カムチャツキー市、ビリュチンスク市、エリゾフスキー地区

b.ハバロフスク地方:ワニノ地区、ソビエツカヤ・ガワニ地区、ニコラエフスク地区、オホーツキー地区、ウリチスキー地区

c.サハリン州:コルサコフ市、ネベリスク市、ホルムスク市

d.チュコト自治管区:アナディリ地区、イウリチンスキー地区、プロビデンスキー地区、チャウンスキー地区(アナディリ港、ベリンゴフスキー港、ペベク港、プロビデニア港、エグベキノト港の5港を含む)

 

 自由港制度には、輸出入手続きのワンストップ窓口、国境通過ポイントの24時間運営、国境における8日間までのビザ取得、自由港入居者向け保税地域が含まれている。入居者は税の減免のほか、建設許認可承認の短縮化などの優遇措置を享受することができる。ウラジオストク自由港と同様に、監督委員会が極東自由港における入居者の承認などを所管する監督機関となる予定だ。

 

<官民からの意見踏まえ内容を検討>

 法案は20163月に議会を通過すると見込まれる。大統領の承認を経て、公示90日後の施行と規定されている。この場合、保税地域と輸出入手続きのワンストップ化に関する内容は2017117日に施行するとされている。

 

 法案は現在、他省庁やパブリックコメントを踏まえて政府内で検討されている段階で、内容が変更される可能性がある。11月に実施された公開審議において、地方政府機関、連邦省庁、ビジネス団体から多くの指摘があり、ロシア連邦市民評議会は、入居者として承認される過程の透明性の欠如、運営会社による権限乱用などについて問題提起した(同評議会発表1130日)。

 

 アレクサンドル・ガルシカ極東発展相は、テレビチャンネル「ロシア24」の番組でのインタビュー(1130日)で、同日までに、自由港運営会社である極東発展公社に提出されたウラジオストク自由港への公式な入居申請は8件で、投資予定総額は660億ルーブル(約1,122億円、1ルーブル=約1.7円)であることを明らかにした。また、20153月に制度が導入され、これまで設立された9つの優先的社会経済発展区域(TOR)には75件の入居申請があり、投資予定総額は2,750億ルーブルになっている。

 

(タギール・フジヤトフ)

(ロシア)

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