水銀を含む製品の製造と輸入が原則禁止に

(カナダ)

トロント事務所

2015年12月02日

 カナダで水銀による環境汚染の低減を目的として11月8日、水銀を含有する製品に関する規制が施行された。水銀を含むほとんどの製品は、国内での製造および輸入が禁止される。同規制の適用が免除される一部の製品には水銀含有量の上限が設定されるほか、製品の製造者および輸入者には、環境省への定期的な報告やラベル表示が義務付けられる。

<規制対象外の製品にはラベル表示が必要>

 水銀を含有する製品に関する規制は、環境保護法に基づき、20141119日に政府が発表したもので、水銀およびその化合物を含むほとんどの製品の製造と輸入を禁止もしくは含有量を制限する内容となっている。環境省は、規制によって環境への水銀の放出リスクを低減し、国内の水銀の蓄積量を減らすことを期待している。

 

 同規制では、水銀が不可欠と判断される製品は免除されるが、含有量に上限が設定される製品もある。免除対象となった製品の製造者もしくは輸入者は、取り扱った製品の水銀含有量や生産量、輸入量などを3年ごとに環境省に報告する義務を負う。また、水銀を含む製品には、水銀を含有していることが消費者に分かるようラベル表示が必要となり、安全な取り扱い方法や製品が破損した場合の対処方法、使用後の処分方法やリサイクル方法を表示することが求められる。

 

 環境省のガイドラインでは、水銀の使用を禁止する製品として、サーモスタット、体温計、スイッチ、継電器、温度計、気圧計、流量計などの測定機器を例示している。

 

 この規制の適用が免除されるのは、技術的もしくは経済的に水銀の代替ができない製品で、蛍光管やネオンサイン、特定の医療機器や実験装置、歯科用アマルガム(水銀と他の金属の化合物)、自動車用ヘッドランプなどが該当する。免除される品目とそれぞれの水銀含有量の上限は法務省のウェブサに公開されている。

 

 なお、この規制は他の政府機関が所管する食品や医薬品、化粧品などには適用されない。

 

<輸入製品の価格が上昇する可能性も>

 環境省は、この規制が国内製造業に与える影響はそれほど大きくないとみている。国内の水銀を含む蛍光管やネオンサインの製造者は、海外の規制に対応するため、自主的に製品の水銀含有量を減らしており、規制に対応するために新たな追加投資や製品の改良をしなくても、含有量の上限を順守できるとみられるからだ。

 

 一方、水銀の使用が禁止される製品の輸入者は、技術的に水銀を含まない代替品に切り替える必要に迫られることになるが、その切り替えに伴うコスト上昇分は販売価格に上乗せされる可能性がある、と同省は予測している。

 

(伊藤敏一、ジョニー・タン)

(カナダ)

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