首相や主要閣僚らが国内外ビジネス関係者に投資訴える-イスラマバードで第2回パキスタン投資会議-

(パキスタン)

カラチ事務所

2015年11月11日

 第2回パキスタン投資会議が11月4日から2日間、イスラマバード市内のホテルで開催された。パキスタンへの直接投資に関する大規模なセミナーで、ナワーズ・シャリフ首相をはじめ主要閣僚が講演を行い、国内外のビジネス関係者600人に対して投資を呼び掛けた。

<対内投資促進への重視姿勢示す>

 パキスタン投資庁(BOI)が主催した今回のイベントには国内外から約600人が参加し、そのうち約200人は国外29ヵ国から訪れた。パキスタン政府からはシャリフ首相をはじめ、イスハク・ダール財務相、アフサン・イクバル計画開発復興相、クッラム・カーン商業相、シャヒド・アバシ石油天然資源相、ミフタ・イスマイルBOI長官らの主要閣僚が列席し、現政権による対内投資促進を重視する姿勢を示した。

 

 投資に関する全12のテーマ別にセミナーが行われ、初日はエネルギー、石油ガス、中国パキスタン経済回廊(CPEC、以下「中パ回廊」)、農林畜産、繊維・その他の産業、特別経済区(SEZ)について、2日目は国内4州別の投資環境、税制度、投資政策についての解説とパネルディスカッションが行われた。

 

<首相は2017年までの電力不足解消を強調>

 シャリフ首相は開会スピーチの中で、2年半にわたる同政権の取り組みを発表した。同政権の4つの重点テーマ、(1)テロ組織との戦い、(2)経済の再生、(3)エネルギー問題の解決、(4)教育・健康の推進について、これまでの成果を述べた上で、「中国が協力する460億ドル相当の中パ回廊計画によって、エネルギー開発、インフラ開発が推進される。さらに液化天然ガス(LNG)発電所2基の建設により、2017年までに停電はなくなる」と強調。マクロ経済指標についても、インフレ率や経常収支の好転など全体的に良好とした上で、「今はパキスタンへ投資するのに良い時期だ。民間企業は投資を通じて、パキスタンの経済発展をサポートしてほしい」と訴えた。

 

 投資家の代表としてスピーチした、ゼネラル・エレクトリック(中東北アフリカ・トルコ地域)のナビール・ハバイェブ会長は「パキスタンは世界6位の人口を持つ有望市場だ。当社は地場資本のサファイア・グループ、サイフ・グループ、エングロ・パワージェンといったパートナーと良い関係を築きながら、パキスタン市場に対応している。当社のコンバインド・サイクル発電システムは効率性に優れた技術で、停電解消に役立つとともに、パキスタンの持続的成長に貢献していきたい」と語った。

 

 アフサン・イクバル計画開発復興相は「2013年の政権発足時、パキスタンは危険な国という印象だけだったが、2015年にはパキスタン経済に対する国際的な論調が変化している」と発言。同相は、中パ回廊における独立系発電事業者(IPP)の発電所計画や中パ工業団地計画のほか、アジア開発銀行(ADB)主導の中央アジア地域協力(CAREC)における地域電力網計画、トルクメニスタン・アフガニスタン・パキスタン・インド(TAPI)とパキスタン・イランの計2本のガスパイプライン敷設計画についても言及した。

 

<外国投資家は税務問題を指摘>

 歳入庁(FBR)からは、現行の税制度について説明があった。パキスタンは法人税を年に1%ずつ引き下げており、20172018年度には30%となるため、「民間企業にとって魅力は高まっている」とした。中小企業の法人税率は25%、新規に設立した外資企業(外資比率50%以上)は20%とさらに低くなるという。

 

 産業別では電力、石炭採掘、LNGターミナル運営、住宅、ソフトウエア、ハラール食肉、携帯電話組み立て製造などに法人税減免などの優遇制度を用意し、地域別ではSEZ、バロチスタン州のグワダル地区、シンド州のラルカナ工業団地、カイバル・パクトゥンクワ州、バロチスタン州、ギルギット・バルチスタン州などで設立した企業に優遇が付与されている。また、中パ回廊の関連企業に対しては、中国の金融機関への利子支払いについて、特別な恩典が用意される予定としている。

 

 一方、外国投資家商工会議所(OICCI)のナディーム・エラヒ会長は「外国投資家にとって、税還付の遅さが最大の課題だ。税務手続きの負担を軽くしてほしい」と指摘した。世界銀行のビジネス環境調査「Doing Business 2016」でパキスタンは189ヵ国・地域中、総合138位だが、「税の支払い」では171位と最低ランクに近い。特に手続き数が多く、税務にかかる時間が長いことが、投資環境上の大きな課題になっている。

 

(北見創)

(パキスタン)

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