トルコとシンガポールのFTA交渉が妥結
(シンガポール、トルコ)
シンガポール事務所、イスタンブール事務所
2015年11月06日
トルコ政府とシンガポール政府は10月6日、両国間の自由貿易協定(TRSFTA)交渉が妥結したと発表した。トルコはシンガポールの物品に対する関税を10年かけて95%以上撤廃し、シンガポールはトルコの全ての物品に対する関税を即時撤廃する。TRSFTAは物品貿易以外にもサービス貿易など幅広い分野を対象とし、トルコが初めて他国と合意した政府調達分野も含んでいる。両国は11月中旬にトルコのアンタルヤで開催されるG20サミットでの署名を目指して準備を進める。
<両国ともアジアと欧州の戦略的な場所に位置>
トルコのニハト・ゼイベクチ経済相とシンガポールのリム・フンキャン貿易産業相(貿易担当)は10月6日にイスタンブールで会談し、TRSFTAの交渉妥結を共同声明で発表した(注)。ゼイベクチ経済相は、トルコ企業にとってアジアの周辺国を含めた6億以上の人口の中央に位置するシンガポールは重要な「港」であると指摘、「両国企業は互いの地理的優位性の恩恵を享受できる」と述べた(アナドル通信10月6日)。一方のリム貿易産業相も同様に、「シンガポールとトルコは、ともにアジアと欧州における戦略的な場所に位置し、両国企業にとって、より大きな市場への入り口になる」と歓迎した。
シンガポールの産業界からも、トルコとのビジネス拡大に期待が寄せられている。シンガポールビジネス連盟(SBF)のホー・メンキット会頭は「貿易に加え、シンガポールビジネス界は、欧州への近接性からメディカルツーリズムのようなサービス分野に特に関心がある。また、精密エンジニアリング分野の企業にとっては、相当な規模の自動車産業も魅力的だ」と述べている(「ストレーツ・タイムズ」紙10月7日)。一方、トルコのメディアの中には、シンガポールをマレーシア、インドネシアなどでのインフラ開発における「資金需要の中心地」として強調し、トルコ企業とシンガポール企業による第三国協力の可能性を期待する論調もある(「デュンヤ」紙10月21日)。
TRSFTA交渉は、2014年1月のエルドアン大統領のシンガポール訪問を受けて開始されていた。両国は11月15~16日にトルコのアンタルヤで開催されるG20サミットでの署名を目指して準備を進め、署名後、できるだけ早い時期に発効させることで一致している。
<トルコは10年かけて95%以上の物品関税を撤廃>
TRSFTAは、物品貿易に加え、サービス貿易、投資、政府調達、知的財産権、電子商取引、競争、透明性といった分野を包括的に含む協定となっている。詳細は発表されていないが、シンガポール貿易産業省(MTI)の発表(10月6日)によると、主要分野で以下の合意がされている。
○関税撤廃
トルコは、協定発効直後にシンガポールの80%の物品に係る関税を即時撤廃し、10年かけて95%以上の物品に係る関税を撤廃する。一方、シンガポールは、トルコの全ての物品に対する関税を即時撤廃する。
○サービス分野
トルコとシンガポールは、互いのサービス市場への参入をしやすくすることを約束。サービス市場には、互いに関心が高い小売り、ビジネスサービス、建設の分野を含んでいる。
○政府調達
トルコが他国と政府調達分野で合意したのは、TRSFTAが初めて。シンガポール企業は、トルコ中央政府ならびに30の大都市自治体(イスタンブール、アンカラ、イズミルなど人口75万以上の大都市の自治体)が行う政府調達に参加することができる。トルコ企業も同様に、シンガポールの政府調達市場に参入できる。
なお、トルコとシンガポールの間では、二重課税防止協定(2001年8月発効)および投資促進保護協定(2010年3月発効)が締結されている。
(注)現時点で、トルコ政府は公開文書による発表をしていない(アナドル通信による10月6日の報道のみ)。一方、シンガポールは貿易産業省(MTI)が10月6日にプレス発表している。発表はMTIウェブサイト参照。
(小島英太郎、中島敏博)
(シンガポール、トルコ)
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